妄想小説
潜入捜査官 冴子
二十四
「で、その後どうなんですか。鬼源組の動きは?」
情報連絡の為に久々に連絡役の杉本雄太と顔を合わせた冴子だった。
「まだ目立った動きはないわ。でも純子があれだけ捨て身で捜査を続けていた相手だから何もない筈はないわ。幸い、こっちの身分は怪しまれてないようだからもう少し深く潜入してみるわ。そっちはどう? 最近出入りが無くなった男は居なかった?」
「ずっと内偵を続けている間に作成したリストを洗ってみたんですが、どうも三島たけるっていうチンピラみたいのがこのところ姿を見せていないようです。以前はよくアンシャンテに出入りしていたようなんですが。」
「アンシャンテにチンピラ? あの店に来る常連は皆、どっかの社長連中ばかりよ。」
「いや、そう言えばそうですね。あそこの社長か社長夫人の親戚か何かじゃないですか?」
「写真はないの?」
「あ、これです。」
「ふうん。いい面構えしてるわね。案外貴方の言う通りかもね。出生を洗い出してみて。それから店に美沙っていう子が出入りしていた時期があるらしいんだけど、その女についても調べてみて。」
「判りました。私も黒服として潜入しなくていいですか?」
「まだいいわ。下手に動いて感づかれるといけないから。私ひとりでもう少し探ってみるわ。」
「わかりました。くれぐれも気をつけて。」
(三島たけるか・・・。何者かしら。)
冴子は雄太から得られた情報を元に、更に潜入捜査を続けることにしたのだった。
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