股間責め吊り

妄想小説


潜入捜査官 冴子 第二部



 三十二

 入ってきた猿蔵と名乗ったのはまだほんの若僧といった風情だった。作務衣のようなものを羽織っている。鬼源組の若い衆とは全く別次元の男のように思われた。組の一員とは別に鬼源個人に仕えている下男らしかった。猿蔵のほうも目にする光景は想像を絶するものだったようだ。おそらくこれまで旦那として使える鬼源とその情婦の濡れ場には一切遭遇したことは無い様子だった。猿蔵が自分の姿を見て、はっと息を呑むのと同時に股間のモノを勃起させたのは明らかだった。
 「こっちへ来て。こっちに近づくのよ。」
 縛られたまま、冴子は猿蔵に優しく話し掛ける。しかし猿蔵は近寄っていいものかどうか思案して躊躇していた。
 「こっちへ来なさい、猿蔵っ。」
 冴子が強く命令口調で言うと、猿蔵は瞬間的に反応するように近づいてきた。しかし目線は冴子の剥き出しの乳房と股間は避けるようにしている。
 「ねえ、お願い。この乳首と股間に付けられているものを取って頂戴。」
 「えっ? で、でも・・・。」
 猿蔵はどうしたらいいか分からずに震えている様子だった。
 「あ、いいのよ。この洗濯バサミは鬼源さんがしたものじゃないの。私が縛られてる縄は鬼源さんがしたものだから勝手にいじっちゃいけないけど、こっちは鬼源さんじゃないの。だから貴方が外したって怒られることはないわ。」
 「じゃ、倫子奥さまが?」
 「そう。だから外して頂戴。」
 「わ、わかりました。」
 そう言いながらなるべく冴子の股間と乳房を見ないようにしながらおそるおそる猿蔵が洗濯バサミを外していく。
 「ふうっ・・・。」
 辛かった洗濯バサミの痛みから解放されて、思わず安堵の溜息を吐く冴子だった。
 「ねえ、この事は誰にも内緒よ。旦那様にも・・・。それから勿論、倫子さんにも。他の誰にもよ。いいわね。」
 「あ、・・・。は、はいっ。」
 猿蔵と名乗った小僧はどうしていいのか判らないような表情をしていた。
 「猿蔵っ。あなた、勃起してるわね。」
 猿蔵は突然指摘されて慌てて股間を両手で隠そうとする。
 「あ、あの・・・。済みません。」
 「いいのよ。隠さなくっても。その作務衣の下に穿いている方を降ろしなさい。下穿きもよ。」
 冴子に言われて暫く躊躇っていたが、猿蔵は作務衣とその下のトランクスをゆっくりと膝まで降ろす。その途端に股間のモノがバネがはじけるようにビクンと天に向けて跳ね上がった。
 「こっちへ近寄りなさい。」
 冴子が命令すると、猿蔵は一歩冴子に近寄る。いきなり冴子は上半身を折り曲げるようにして身体を前に倒すと、猿蔵の剥き出しのペニスを口に含む。
 「あっ。」
 猿蔵が後ろへ引く躊躇の間を与えないように、冴子は強く猿蔵のペニスを咥えて吸い込む様に口の奥に引き込む。
 「ああ、す、凄い・・・。」
 猿蔵はただ茫然として為されるがままに自分の股間を突き出していた。冴子は猿蔵が果てようとする直前に口の中のモノを吐き出す。
 「ああっ・・・。」
 「いい事、猿蔵。今あったことは誰にも言っては駄目。全て忘れるのよ。そうでないと、貴方のそのチンポは旦那さまに切り取られてしまうのよ。わかった?」
 「えっ? あ、は、はいっ。」
 「後は、自分の手でしなさい。さ、早く行って。」
 猿蔵は慌てて作務衣とトランクスを纏めて引き揚げながら走るように座敷を後に走り去ったのだった。

 鬼源が戻ってきたのは、それから暫く時間が経ってからのことだった。約束どおりの行為はすることもなく、何か思い悩んだような表情で眉間に皺を寄せたまま冴子の戒めを解いたのだった。冴子は両手の自由を取り戻すと身繕いをしながら、そっと自分の股間を気づかれないようにチラッと見る。つるつるの真一文字の股間には赤いミミズ腫れが痣のように痕になって付いていたが源蔵がそれに気づいたかどうかは冴子には判らなかった。深追いするのは今は止めておこうと思った冴子は、話が途中になっていた若頭が取り仕切っているという鬼源組の凌ぎ、資金調達の事については今はまだ問い詰めないでおこうと判断したのだった。

saeko

  次へ   第二部 先頭へ




ページのトップへ戻る