妄想小説
潜入捜査官 冴子
十六
冴子がそう思った時には着物の上から二の腕ごと、縄が冴子の胸元にまわされていた。
「あ、駄目です。そんな事・・・。」
そう言いながらも冴子には拒否することは出来ない。自分から潜入の場に飛び込んでいるのだ。拒んで逃げ出せば元も子もないのだ。
「し、縛るの・・・ですか?」
鬼源の顔を歪めながらニヤリとする。
「儂は女は縛られている姿というのが一番好きでな。裸にするのよりも好きなんじゃ。儂と付き合うからにはこれに慣れて貰わんことにはな。」
「縛ってどうしようというのですか?」
冴子は鬼源に身体検査をされた時に、鬼源が女一人と素手で戦うのならまだまだ敗けはせんと言っていたのを思い出す。あの時、鬼源には負けないという自信はそれなりの武道の修行を積んでいる身としては持っていたのだった。しかし縛られて両手の自由を完全に奪われてしまえばそうは言っていられない。鳩尾に正拳突きを当てられ手で防ぐことが出来なければ確実に相手の手に堕ちるのは目に見えていた。縛られるのを抗えない以上、犯されるのは覚悟した冴子だった。元々、女で潜入捜査をすればそれは覚悟しておかなければならない事なのだった。逆に冴子たち女潜入捜査官は犯されても自分が感じている以上に恍惚になるのを装う技まで磨いているのだった。
「私を犯すのですね。」
「ふふふ。犯すという言葉はちょっと違うな。そりゃっ。」
「うっ・・・。」
源蔵が力を篭めて縄をきりっと締め上げると、思わず溜息が洩れてしまう。
「どうだ、縛られた気分は。男ってのは縛られている女を観るとそそられるものなんだが、女の方だって縛られると満更でもないだろ。俺は女になったことがないから実感はないが、子宮がぎゅっと熱くなるっていう女も少なくないみたいだぜ。」
鬼源に言われて冴子は一瞬はっとする。訓練の時にも縛られることはあるのだが、縄を掛けられる、とりわけ男に縛られると身体の一部が勝手に反応してしまう事には気づいていたからだ。
「他の人はどうか判りませんが、私はそんな事はありません。」
内心を見透かされないように表情を変えずにそう言い切った冴子だったが、目の前の男にそうだとは思われたくなかったのだ。源蔵には目を合わさず俯いていた冴子だったが、源蔵は冴子を縛って余った縄尻を座敷の鴨居に通すと端を床の間の柱に括り付けてしまう。冴子が逃げようとしても殆ど身動きが出来ない状態にさせられてしまったのだった。
次へ 先頭へ