妄想小説
潜入捜査官 冴子 第一部
十二
「マイクを持ってきて。そして『キューティーハニー』を掛けてちょうだい。」
奈美がマイクを受け取った瞬間にカラオケのキューティーハニーのテーマ曲のイントロが流れてきた。
「この頃 はやりの女の子~ お尻のちいさな女の子~」
突然歌い出した奈美の透き通った声に、客たちは一瞬声を喪う。
間奏になってステージ上で奈美が踊り始めると、バックダンサー達が立ちあがって後ろで奈美の踊りに合せる。客席からはやんやの拍手喝采が置き始める。
「イヤよ、イヤよ、イヤよ 見つめちゃいやー ハニーフラーッシュ !」
闇金融業社長の谷亀の野次で凍りつきかけたフロアの雰囲気が、奈美の歌と踊りで一気に盛り上がりを取り戻す。
「いやー、君。歌も踊りもうまいねえ。」
ボックスに戻ってきた奈美を、惚れ惚れした顔で出迎える豊山社長だった。
次へ 先頭へ