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妄想小説


潜入捜査官 冴子 第一部



 五

 冴子が開店前のクラブ・アンシャンテに入っていくと、二人の白のタキシードに黒いシャツの男が出迎える。事務所に居た男もその後やってきて、冴子は店ではショーなどに使われるらしい円形の一段高くなった台の上にあがらされる。男達は冴子を囲んで見上げるような位置でそれぞれ客席に着く。
 「なかなかいい身体をしてるようだな。じゃ、まずは身体検査と行くか。」
 「身体検査?」
 「ああ、服を脱いで貰おうか。この店には時々ヤバイものを持ち込む輩がいるんでな。初めての従業員は身体検査をするって決まりになっているんだ。」
 「わ、私・・・。何も変なものは持ってませんけど。」
 「そいつは俺たちが調べてみなきゃ、何とも言えないからな。」
 「うっ・・・。わ、わかったわ。」
 冴子はここで逆らってはどうにもならないので、おとなしく言う通りに脱ぐしかなかった。台の上でストリップでもするかのように、ブラウスのボタンを外していく。男達のぎらついた目は、危ないものを持って無いかのチェックだけが目的ではなさそうだった。

身体検査恥じらい

 「脱いだらそのブラウスはこっちへ寄こすんだ。俺が念入りに調べてやる。さ、次はブラジャーだ。」
 男は冴子の手からブラウスを奪い取ると、碌に見もしないで冴子がブラジャーを外すところに注目する。
 「こんなところに何も隠せないわよ。」
 そう言いながらも仕方なく両手を背中に廻してブラジャーのホックを外そうとしていたその時だった。
 「おい、お前等。何、やってんだ?」
 暗闇の中から突然太いだみ声がした。
 「あ、オーナー。いらっしゃってたんですか。」
 闇からの声に男三人が一斉に直立不動になる。
 「あ、あの・・・。こ、この女がウチの店で働きたいって言うんで、身体検査してました。」
 闇から突然現れた男が明りのある場に出てきてその風貌から冴子は事前調査の資料で見た鬼塚源蔵であることに気づく。源蔵は舐めるように冴子の頭から足先までをじっくり検分する。
 「こいつの身体検査の続きは俺がやる。ジロー、マサっ、着いて来い。このお嬢さんを奥の特別室にご案内だ。」
 「は、はいっ。」

 「おい、お前等二人はあっちを向いてろ。」
 特別室と言われた奥まった部屋に案内された冴子は源蔵の後ろに控える男二人が仕込み杖のようなドスを手にしたまま冴子とは反対側を向くように指示されるのを聞いていた。自分の方を見ているのは、源蔵本人一人だけだった。
 「さて、お嬢さん。身体検査の続きを見せて貰おうか。」
 奥の部屋の壁際に立たされた冴子が真正面にどっかりと座りこんだ鬼源こと、鬼塚源蔵の前に立たされていた。
 冴子はもう覚悟を決めて、さっき外し掛けたブラジャーのホックを外すと床に投げ落とす。続いてミニスカートの横のホックを外すと、ストンとそれも床まで脱ぎ落す。ショーツ一枚になった冴子の姿を、鬼源は露わな股間を注視するのではなく、冴子の視線から目を逸らさない。冴子もたじろぐことなくショーツの端に両手を掛けると一気にそれを脱ぎ下ろす。さすがに丸裸になった冴子は恥ずかしさに源蔵を睨みつけていることも出来ず顔を下に俯かせる。
 「そこの椅子に腰掛けるんだ。」
 源蔵が指し示したのは冴子が立っていたすぐ横にあった肘掛が付いた一人用のソファだった。
 「そしたら両脚をその肘掛の上に載せるんだ。」
 冴子が言われた通り肘掛け椅子に全裸で腰を下ろすと、源蔵が命令する。それはMの字に両脚を開いて股間を露わにすることを意味していた。冴子には言われた通りにする他なかった。源蔵の命令に従うと、自分の陰唇が剥き出しになって男の目の前に晒されてしまうのが判る。
 「近頃は股間に飛び道具を隠している輩がいるもんでな。済まんが検めさせて貰うぞ。」
 冴子は屈辱的な格好にさせられたのを目を瞑って耐えていたが、その露わにさせられた陰唇の中に源蔵の指が無遠慮に挿し込まれるのを柔肌の感触で知るのだった。
 「よし、いいだろう。今度はここに土下座の格好で四つん這いになれ。」
 冴子は肘掛椅子から両脚を下ろすと、椅子の前で土下座の格好を強いられる。その頭を源蔵の手が鷲掴みにする。暫く髪の間をまさぐっていた手が漸く離される。
 「いいだろう。妙なものは持っていないようだな。もう服を着てもいいぞ。」
 源蔵は冴子が何も隠し持っていないことを確認したことを知って急いで脱いだ服を身にまとう。
 「おい、お前等。もういいぞ。こいつは何も危ないものは持って無い。」
 「しかしオーナー。何かあるといけませんから。」
 「お前等。この鬼源を誰だと思っとるんだ。丸腰の女ひとりを組み伏せるぐらいの力は残っとるわ。」
 「はあ、失礼しました。それでは我々はこれで。」
 二人はすごすごと手にしたドスを持ったまま部屋を出て行く。
 「お前、なかなか度胸が据わっとるな。気に入ったぞ。」
 「オーナーが普段、お命を狙われる立場にあるのだというのはよく判りました。私のような者が突然やってきて、怪しまれるのも無理はありません。身体の何処をお調べになっても構いません。存分にお検めくださいませ。」
 まだ下着しか身に着けていない格好で冴子は源蔵に一歩近づく。
 「お前、和服は自分で着ることが出来るか?」
 「はい。仕事上、和服も着ることがよくありましたので。」
 「その扉の向うに着物と帯がある。それを着てこっちに来てみてくれんか。」
 「わかりました。」
 冴子は相棒の杉本雄太が無線機だけは身に着けておいて欲しいというのを、護身用の武器は勿論のこと、一切の通信機器も身に着けない状態で乗り込んでいたのだった。
 (念の為と思って、何も身に着けないでいてよかったわ。)
 冴子は源蔵の信用が得られたことでほっとして奥の部屋の次の間になっているらしい小部屋へ向かう。誰のものか分からない和服が衣紋掛けに掛けられていた。
 (純子もこれを着たのかしら・・・。)
 ふとそんなことが冴子の頭をよぎる。

saeko

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