妄想小説
潜入捜査官 冴子 第二部
三十
襖がすっと音も無く開かれ、その向こうに見えた顔を見た冴子は思わず身体を強張らせる。初めて観る顔ではあったが、直感で冴子は鬼源の妻、倫子であることを悟った。
「おや、凄い格好だね。お前が奈美って娘かい?」
「あ、あなたは・・・。」
倫子は後ろ手で襖を閉じると、ゆっくり冴子に近づいてきて縛られて自由にならない身体を頭から足の先までためすがめつ眺めている。裾は絡げられていて、恥毛を失った股間を露わにしてしまっている。胸元の襟も肌蹴られていて、乳房から乳首の先までが剥き出しの状態だった。冴子には男に見られている以上に同性に自分のあられもない姿を隠すことも出来ずにじっくり観られていることが恥ずかしくて堪らなかった。
「女をこっそり座敷の奥に連込んじゃ、こんな事をして愉しんでいたのかい。アンタもよっぽどの好きモンだね。縛られて嬉しがっているとはね。アタシには一度もこんな事、したことないのに。」
それは明らかに侮蔑の言葉だったが、微かな嫉妬も感じられるのだった。
「こんな格好にされて、嬉しいのかい? この売女が・・・。」
倫子は縛られて何も出来ない冴子の顎に手を当てると顔を上向かせる。冴子がキツと倫子の方を睨んだまま黙っていると、すっと顎の手が離れたかと思うと張り手が冴子の頬を襲った。
パシーン。
「うっ・・・。」
「どうした? 口惜しいかい、その顔は。ふん。」
パシーン。
今度は反対側の頬が思いっ切り張られる。冴子は背中で括られた手のひらを握りしめてじっと堪える。
「そうだ。折角そんな卑猥なモノをこれみよがしに露わにしてるんだから、アンタにお似合いのことをしてやろう。ちょっと待ってなさい。」
そう言うと、倫子はこの家の隅々まで知っているとばかりに入ってきたのとは別の襖を開けてそこから外に出て行く。何やら手にして倫子が戻ってきたのはそれから直ぐだった。
戻ってきた倫子は持ってきたものを身動き出来ない冴子の目の前に翳してみせる。
「そ、それは・・・。」
「そうさ。洗濯バサミってやつさ。お前のそのいやらしそうな乳首にはお似合いだよ。ほら。」
「あうっ・・・。」
乳首が千切られそうな傷みに冴子は思わず声を挙げる。
「ほら、こっちも。もう一つ。」
「い、いやっ・・・。」
両方の乳首が食らいつくかのように洗濯バサミに挟み込まれる。
「ほらっ。やっぱりお似合いだよ。お前はマゾなんだろ。痛めつけられて気持ちがよくなるっていうじゃないか。お前みたいな変態には、さぞかし気持ちがよかろうよ。ふふふ。」
冴子は口答えもせず、黙って唇を噛んで倫子の虐めに堪えている。
「まだあるんだよ。下の唇がまだだからね。そっちにはこれのほうが似合うと思ってね。」
そう言って倫子が冴子に翳してみせたのは更にバネの力が強そうなアルミ製のものだった。
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