pills

妄想小説

深夜病棟


 六

 (握られてしまった・・・。)
 琢也にとってはまさかの出来事だった。そもそも看護師が廻ってくるのはまだまだだと思っていたのだ。点滴のパックは半分は過ぎていたが残りはまだ充分あったので、暫くは来ないだろうと油断していたのだ。それでパジャマのズボンとトランクスをずりさげて垣間見てしまった看護師のスラックスパンツから透けて見えたパンティラインを思い出しながらオナニーをしていたのだった。
 突然の声と共に看護師がカーテンの向こうから顔を出した為にズボンをずり上げるタイミングを失ってしまった。それで即座に寝ている振りをしたのだった。勃起した一物はすぐには元に戻らない。しかし暗がりの中なので気づかれないだろうと高を括っていたのだ。それがこともあろうに看護師は毛布の中にまで手を伸ばしたのだ。慌てて手を毛布の下に戻したので点滴チューブを深く引きこんでしまったのだとは気づかなかった。
 毛布の中で看護師の手が一瞬おのれのモノに触れた際に、看護師が気づいたかどうか自信はなかった。しかしその後看護師は平静を保っていたのでわからなかったのだろうと思うことにしたのだ。心臓はバクバク高鳴っていたが、息だけは何とか規則的に軽く続けるように努めた。それで看護師も眠っているのだと思ったようだった。テーブルに残してあった催眠導入剤の空きのパックのせいでそう思い込んだのだと知ったのはずっと後の事だった。
 点滴のビュレットを調整している気配で何も気づかないまま行ってしまうと思っていたのだが、その後看護師が顔を近づけてきたのは看護師の甘い香りがすぐ傍でしたことで判った。薄目を開いて看護師が寝息を確認しているのだと分り、必死で声を立てないように堪えた。その直後だった。看護師の温かい掌がおのれのモノを包み込むのを感じたのだった。それはカリの下を優しく包み込んでいた。
 最初は起きていることを気づかれないようにすることばかり考えていたが、次第にもっと強く握って欲しいという気持ちが湧いてきた。しかしその手はすっとひっこめられてしまったのだ。薄目を開いた琢也の目に、看護師が自分の唇を舐めているように見えた気がした。しかしすぐに看護師はくるりと踵を返すとカーテンの向こうへ消えてしまったので自分の妄想のせいか、はっきりとはしなかった。
 看護師の足音が遠のいていくのを聞いて、琢也は今のうちにズボンをずり上げておいたほうがいいかと思った。しかし毛布の下でパジャマのズボンに手を伸ばしたところで、ふと看護師が次に点滴パックを外しに来た際に万が一毛布の下を確認されて、ズボンを穿いていたことが判ってしまうと起きていたことに気づかれてしまうかもしれないと思い、そのままの格好で寝ていることにしようと決心したのだった。

茉優

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