妄想小説
深夜病棟
三十四
「わ、私を今晩呼び出したということは、私に何かしろっていう事ですね。」
「さあ、どうかな。私に何か言わせるよりもお前のほうから申し出るべきなのじゃないのか?」
「私から申し出る? 私が何かを申し出ればいいのですか? 一体何を・・・?」
「私に言わせようというのか。ふふふ。お前が自分で考えて言ってみろ。」
茉優はいよいよ窮地に立たされてしまった。思ってもみない展開だった。リベンジポルノ画像の流出どころではなくなっていたのだ。
「わ、私の身体でいいのなら幾らでも差し出します。それでいいですか?」
「ふん、甘いな。お前、今朝ナース達の前で俺にどんな恥を掻かせたか忘れたようだな。」
「あ、あれは・・・。うっ・・・。わ、私が悪うございました。とんでもない返事をしてしまいました。」
「ふん、それで?」
「せ、先生が望まれることでしたら、何なりとお申し付けください。私に出来ることは何でもしてさしあげます。」
「ふうん、本当かな?」
ピーン、ピーン、ピーン。
その時、茉優のナース服のポケットでPHS電話が患者からのナースコールを告げる音がした。
「そうか。お前はまだ勤務中だったな。患者のところへ行かねばならんのだろう。ならば行くがいい。但し、そのままの格好では駄目だ。」
「え、この格好では駄目?」
「そうだ。今夜の為に用意しておいた服がある。これを身に着けて今晩は最後まで勤務をするのだ。ただし、下着は一切着けてはならぬ。ここに全部置いていくのだ。これ一枚だけ身に着けて行くがよい。」
そう言って池田が椅子の陰に隠してあったらしい布きれを投げて寄こす。それはいつも看護師の仲田亜里沙が着ているようなクラシック・タイプと呼ばれるミニ丈のワンピースの看護服なのだった。
「こ、これを・・・着るのですか?」
「早くしないと患者が待ってるぞ。いいのか?」
「うっ、わかりました。」
茉優はあまりの事に思考能力を喪ってしまっていた。池田に背を向けるとさっと着ていたナース服を脱ぎワンピースの看護服を纏う。ボタンを嵌める前にブラジャーを外し、下に穿いていたスラックスを脱ぐ。ちょっと躊躇ったが、その後ショーツとストッキングも一緒に下して足首から抜き取るのだった。
「これでいいですか?」
ワンピースの看護服はかなりのミニ丈で素足を大胆に露わにしている。それよりもその下には何も下着を着けていないことが茉優を一層心もとなくさせるのだった。
「ふふふ。いいだろう。用が済んだらここへ戻ってくるんだぞ、いいな。」
そう言うと、たった一枚、超ミニのワンピースを身に着けただけで茉優は夜の入院病棟の廊下へ追い出されたのだった。
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