妄想小説
深夜病棟
十八
「はい。これでいいですよ。手首とひじの部分とぴったり締まってますよね。でも、完全防水っていう訳じゃないので、あまりジャブジャブお湯を掛けたりはしないでくださいね。」
看護師の千春に腕の点滴用チューブの周りをビニルシートを巻いて隅と両端部分を粘着テープで留めて貰うと、シャワー用の養生が完了する。
「ああ、どうもありがとう。これでやっとシャワーを浴びることが出来ます。なにせ、旅行中に発症しちゃって、その後すぐに入院になっちゃったんで久々のシャワーなんです。」
「じゃあ、慌てないでゆっくりやってくださいね。シャワー室の場所、わかりますよね。」
「ああ、大丈夫です。」
養生を終えると、タオルとバスタオル、着替えを持って琢也はシャワー室へ向かう。一人分の予約枠は30分あるので、余裕の時間がありそうだった。
シャワー室の入り口は患者の万が一の急変に備えてドアではなく、ビニルカーテンが掛かっているだけのようだ。養生をしてある右手を庇って、片手で入院着と下着を取ると、全裸になってシャワーのある洗い場のほうへ移る。シャワーの両側に手摺りが付いていて、掴まりながらシャワーが浴びれるようになっている。
お湯を浴びると一気にさっぱりした気分になる。ひと通り身体を流してから備え付けのスポンジにボディシャンプーを塗って泡立てると胸のほうから洗い始める。
「樫山さ~ん、大丈夫そうですかぁ?」
いつの間にか看護師の千春がシャワー室の入り口に来ていたようで、声を掛けてきた。
「ああ、大丈夫ですよ。気持ちよ・・・。あっ。」
その直後にドスンという音を立てて琢也は尻もちを撞いてしまう。
「どうかしましたか、樫山さん? 大丈夫ですか?」
音を聞いて慌てて千春が脱衣所を抜けて洗い場のほうへ入って来る。
「いや、スポンジとシャワーヘッドを両方持ったんで、つい手摺りを放しちゃったんですよ。そしたら、ちょっとふらついちゃって。」
「ああ、やっぱりまだ無理があるんだわ。私の判断が甘かったわ。鎮痛剤のリリカを呑んでいる時は、よっぽど注意しないと。どうしよう。もう、脱いじゃってますしね。」
「大丈夫ですよ。何とかしますから。」
「いや、待って。独りでは危ないから介助しますね。ちょっと待っててください。」
千春はシャワールームの棚から備え付けになっているらしい透明エプロンを取り出すとさっと身に着ける。
「このままじゃ濡れちゃうんで、ズボンを脱ぎます。こっちを見ないでくださいね。」
そう言うと千春は透明エプロンを着けたまま、ナース服のスクラブ着の下に穿いているスラックスとストッキングを脱いでいる。スクラブ着は股下ぎりぎりぐらいの丈しかないので超ミニのワンピースでも着ているような格好になる。琢也は見てはいけないと言われたが、横の鏡を通して千春の露わな下半身をつい覗いて思わず生唾を呑み込んでしまう。
準備が出来た千春は琢也の背後に立つと、泡立ったスポンジを取り上げる。
「じゃ、お背中洗いますね。両手とも手摺りをしっかり掴んでいてください。」
「あ、はい。」
千春の手が、ゆっくりとだが、しっかりとした強さで琢也の背中をなぞっていく。
「前も洗いますね。」
そう言うと、千春のスポンジを持った手が手摺りを握りしめている琢也の腕の腋の下を通って胸元へ伸ばされる。千春が一層近寄ったのが感じられると、下半身で剥き出しのモノが充血し始める。
(あ、やばい・・・。)
そう思ったが両手で手摺りを掴んでいる琢也にはどうすることも出来ない。
「下の方も洗います。」
そう言うと、千春のスポンジを持った手が臍の下のほうへ降りてくる。
「あっ・・・。」
首を擡げた琢也のモノに触れてしまった千春がそのモノの変化に気づいたのだ。
「ご、ごめんなさい。生理的な現象なので自分ではどうにもならなくて。」
「あ、いいんですよ。看護師ですからちゃんと理解してますから。ただ、本で知ってるだけで本物は初めてなので・・・。」
そう言いながらも千春の持ったスポンジは棹の下から上へ向けて撫で上げる。
「痛くない・・・ですか?」
「大丈夫、気持ちい・・・。あ、そういう意味じゃなくて・・・。もう少し強くやっても大丈夫ですよ。」
「じゃ、少しごしごし洗いますね。その方がいいでしょ?」
「ああ、お願いします。やりにくくないですか?」
「大きくなってた方が却ってやりやすいみたい。」
千春の手はペニスの先を充分擦り上げると今度は陰嚢のほうへ降りてくる。
「こっちはデリケートだから、優しくやったほうがいいんですよね。教科書にはそう書いてあったと思うので。」
「そ、そんな事まで教科書で習うんですか。」
「看護師としては知っておかなければならない基本ですよ。」
「ああ、そうなんですね。」
「じゃ、お湯で流しますからしっかり掴まっててくださいね。」
千春はスポンジの代りにシャワーヘッドを取り上げて肩から順番にシャボンを洗い流してゆく。
「はい。終わりました。今、バスタオルをお持ちしますね。」
一旦洗い場を出た千春がバスタオルを手に戻ってくる。身体の正面は千春と反対側の方へ向けて振向いてバスタオルを受け取ろうとする。股間のモノはまだ勃起したままだったからだ。
「あ、やっぱり身体もお拭きします。危ないから。もう一度、手摺りに両手で掴まっていてください。」
そう言うと、千春はバスタオルを広げて背中側に廻り、肩から順番に琢己の身体を拭いていく。腰まできたところで、千春はバスタオルを手にしたまま琢己のすぐ前でしゃがみこむ。
「こっちを向いてくださいな。」
事も無げにそう言うので、琢也は思い切って股間のモノを立てたまま千春のほうへ向きなおる。千春はその屹立したモノの弾力を試すかのようにタオルを押し当てるようにして片手を陰嚢の下に当て、もう片方の手でペニスを念入りに拭ってゆく。恥ずかしいのか、目は一心不乱に拭いているモノのほうを見て琢己とは目を合わせない。その素振りを見ているだけで琢也はそのモノを一層硬くさせ、更に上向かせる。立て膝で跪いている千春は短いスクラブ着では隠しきれないショーツを覗かせてしまっているのに気づいていないようだった。エプロンが透明なので丸見えになってしまっているのだ。
「さ、これでいいわ。」
「本当にありがとうございます。助かりました。」
拭き終わったタオルを琢也に手渡すと、千春は琢也の耳元に顔を近づけ小声で囁く。
「この事は内緒にしてくださいね。本当は要介助の人にしかシャワーを手伝ってはいけない事になっているの。私の判断ミスでシャワーを使わせちゃったので特別のサービスですから。二人だけのヒミツね。」
千春は軽くウィンクするとさっとカーテンを潜ってシャワー室から出て行ったのだった。
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