妄想小説
深夜病棟
三十五
ナースコールを掛けてきたのは、塩谷という耳鼻科入院の老人だった。
「塩谷さ~ん、どうかされましたかぁ?」
茉優が優しい声で訊ねると、塩谷老人は目を擦りながら起きたばかりの様相だった。
「うんにゃ。トイレに行こうと思うてな。したら、眼鏡がみつからんのじゃ。確かこのテーブルの上に置いたと思うんじゃが。」
「あれ、塩谷のおじいちゃん。おでこの上っ。頭に乗っかってますよぉ。」
塩谷老人は眼鏡を額の上にずらしたまま寝入ってしまっていたらしかった。
「あれまぁ。こんなとこに・・・。済まんなあ。こんな夜中に。」
「いいえ、どういたしまして。スリッパ、わかりますか?」
茉優はベッドの下のスリッパに腰を屈めて取ってやろうとする。その時、妙に視線を感じてふと振り返り、老人が自分のお尻をじっと眺めているのに気づいた。茉優は自分が何時ものスラックスではなく、超ミニの看護服しか着ていなかったのを初めて思い出したのだ。
(あっ、いやっ。)
慌てて身を起して老人に向き直る。
「あんた、こんな夜中にそんな寒そうな格好で大丈夫かね?」
老人が短いワンピースの裾の奥を覗いたのは間違いなさそうだった。
「あら、いやだ。ご心配なく。それよりおトイレ、一人で行けますか?」
「ああ、眼鏡さえあれば大丈夫。お手数掛けたのぉ。」
「じゃ、おやすみなさい。おじいちゃん。」
廊下をトイレの方に向かう塩谷老人を見送ってから、茉優は当直室の方へ戻ろうとして隣の病室が樫山の居る部屋だったことを思い出した。
(樫山さんの点滴、大丈夫か見ておこう。)
そう自分に言い聞かせる茉優だったが、無意識のうちに違うことを考えている自分を否定しているのだった。
「樫山さ~ん、起きてらっしゃいますかぁ?」
大きな声にならないように、そっとカーテンの向こうに声を掛ける。反応はなかった。
(今夜も睡眠導入剤を使っているみたいね。)
そおっとカーテンを潜ると、樫山のベッドの脇に入る。点滴のビュレットは規則正しい滴下を続けているようだった。
(点滴の滴下は良好みたいね。)
ふっとベッドの方を向いた茉優の目に樫山が掛けている毛布の中央部分がもっこり持ち上がっているのが見えた。辺りにひと気がないのを確認してからベッドの脇に屈んで毛布の端をそっと持ち上げる。茉優の思った通りのモノがそこにはあった。
(うっ、いけないわ。)
そう思うのだが茉優には自制が効かなくなっていた。一歩、ベッドの近くに踏み寄ると、だらんとベッド脇に出した樫山の手が茉優の裸の腿に触れる。ビクンと電気が身体に走ったような気がする。気が付くと、毛布をそっと剥いで茉優は眠っている樫山の身体を跨いでいた。大きく肌蹴た茉優の超ミニのワンピースの裾のすぐ下に、屹立した樫山のモノが聳えていた。
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