妄想小説
深夜病棟
四十五
入院患者への朝の定時検診を全て終えた脳神経外科の池田医師が居る診察室へ入ってきたのは、耳鼻科の看護師、神藤茉優だった。
「おう、君か。」
「命令どおりこの制服を着てきました。これで御満足ですか?」
「ふむ。その診察室の扉を閉め給え。ついでに内鍵もね。」
嫌な予感がしながらも、従わざるを得ない茉優は言う通りにする。内鍵をロックしてから振向いた茉優に池田が声を掛ける。
「その裾を捲って見せるのだ。」
「え?」
唇を噛んで口惜しそうな表情を見せた茉優だったが、おとなしく命令に従う。
「なんだ、それは。そんなものを穿いていいと何時言った?」
ミニの裾を捲って下穿きを露わにした茉優は恨みっぽく一瞬池田を睨みつける。
「これも脱げと仰るのですね。ストッキングもですか?」
「生脚のほうが、ノーパンにはふさわしいだろ。一日、それで勤務するのだ。」
「わかり・・・ました。」
茉優は顔を伏せてワンピースの中に手を突っ込むと、ショーツをストッキングごと下していく。
「脱いだものはここへ置いていくんだ。」
再び唇を噛みしめると、脱いだばかりの生温かいショーツとストッキングをくるりと丸めて池田の机の上に置くと踵を返す。
「失礼します。」
こうして茉優はノーパン、生脚で看護師勤務に就かされたのだった。
午前中の外来診察を終えて脳神経外科医局の自分の席に戻ってきた池田哲平は、同じ脳神経外科の最も若い看護師、小池美香が自分の机の上を整理しているのを見つけて思わず激昂する。
「お前、何してるんだ。」
「あ、先生。今、机の上の整理をしておこうと思って・・・。」
「俺のものを勝手に触るなと言って置いただろっ。」
そんな事を言われた覚えのない美香は、ちょっとムッとしたが何時ものことなので首を竦めて頭を下げる。
「も、申し訳ありません。二度と致しませんので。」
「どけっ。」
乱暴に若い看護師を押しやるようにすると自分の席にどかっと座った池田は、心配していたものがちゃんとあるか確認すると、その一枚の紙切れを大事なものを扱うかのように一番下の抽斗にしまうと鍵を掛ける。池田がその鍵を診察着である白衣のポケットにしまったのまでこっそり見届けた美香はそそくさと医局を出たのだった。
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