妄想小説
深夜病棟
四十
「あの・・・。」
何か言おうとした茉優を遮って池田は運転手に命じる。
「グレイシア・ハイツまで。」
池田は勝手に自分の棲むマンションの名前を告げていた。自分の帰る看護師寮はそのマンションの先だが、池田が先に降りてそのままタクシーで茉優に看護師寮に帰れという意味ではなさそうだった。(何処まで行くのですか)と訊こうとした茉優の言葉は結局発しないままに終わる。
「着きました。」
そう告げるタクシー運転手に池田は手慣れた手付きでタクシー券を渡すと、茉優のミニワンピースの裾を引っ張るようにして外へ出る。茉優はそのままでは裾を捲られてしまうので、必死で後を追う。しかし、その様子をタクシー運転手は食い入るような目でバックミラーを通じて眺めていた。スカートの裾の奥を覗かれたかもしれなかった。
「そんなに引っ張らないでください。」
タクシーを降りながら茉優はそう訴えた。
「だったら、さっさと着いて来ることだな。」
タクシーを降りきったところで漸く池田は茉優のワンピースから手を放す。
「あの、私・・・。ここからは歩いて帰るのですね。」
思い切ってそう声を掛けてみた茉優のほうへ池田は蔑むような目で睨みつける。
「帰るだと? 夜勤明けの非番の一日だろ。だったら、一日、ご主人様に仕えるのが奴隷の務めだろ。」
(奴隷? 確かにそう言った・・・。)
聞き間違いではないかと初めは耳を疑った茉優だったが、耳に残ったものに他のどんな言葉も思い当らなかった。まだ背中で組んだ手を放していいとは言われてなかった。先にどんどん歩いていってしまう池田を後ろ手に組んだまま慌てて追いかけるしかない茉優だった。
「もう両手を放していいでしょうか?」
エレベータの庫内に入らされた茉優は思い切って池田に訊いてみた。
「ふふふ。まだだ。」
冷たくそう言うと、茉優の顎に手を掛けて上向かせる。両手を背中で組んでいるように命令されているので、縛られているのと同じで何をされても何も出来ないのだ。顎をいたぶった後、その手は胸までおろされ、ナース服の上から乳房を鷲掴みにする。
「あうっ。」
ブラジャーをしていないので、乳房は触ってくださいとばかりに開放されているのだ。
「こっちも淋しいか?」
胸から放した手を今度はナース服の短い裾のほうへ伸ばす。
「ああ、赦してくださいっ。」
下着を着けていないので池田の指がそのまま陰唇に触れてしまう。
「なんだ。濡れているじゃないか。案外、淫乱なんだな、お前。」
そう言いながら茉優の体液が付着した二本の指をわざと茉優の顔面に翳して辱める。茉優は下を向いて堪えているしかなかった。
エレベータでは幸い誰にも出会うことはなく池田の部屋まで到着する。
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