仲田

妄想小説

深夜病棟


 二十三

 「お早うございま~す。今日の昼間担当の仲田亜里沙でえすぅ。」
 明るい声に顔を挙げると、カーテンから現れたのはとても若そうな看護師だった。しかし身に着けているのは琢也にはこれぞ看護服と思える昔ながらの白いワンピースなのだった。
 「あれっ。それ、皆んなと違うナース服だよね。」
 「あ、これっ? 今のナース服にモデルチェンジする前のものなんです。古い方でも使っていいことになっているんで私はこっちを選んでいるんです。だって、今のって男っぽいでしょ。実際、男性看護師も同じの着てるし。」
 「へえ、そうなんだ。君って前、担当してくれた桂木千春さんと同じくらいの年齢だよね、」
 「ああ、千春ちゃん? 彼女は私と同期よ。今年、二年目。」
 「彼女は紺色のスクラブ着にスラックスだったけど。」
 「そう。私達が入った時にはもうナース服はモデルチェンジされてたんだけど、私先輩の看護師さんに古いの譲って貰ったんです。丈はちょっと詰めたんだけど。私達の間ではこれのこと、クラシックって呼んでるんです。」
 琢也が見ると確かにワンピースは短めだった。しかし琢也が知っている頃はミニスカートが大流行の時期で、看護服もミニ丈というのは極普通にあった気がするのだ。
 「こっちの方が男性の患者さんには評判がいいのよ。私も女らしく見えるからいつもこっちにしてるの。」
 「ああ、分かる気がするなあ。」
 「樫山さんも、こっちのほうが好きなのね。」
 「ああ、まあそう・・・かな。」
 樫山は微妙にぼやかすことにした。
 「えーっと、じゃあ検温と血圧測定からしますね。はいっ、体温計。」
 亜里沙はコンビニの女店員がお釣りを渡す時のように、受け取る樫山の手にもう片方の掌を当てて渡すのだった。亜里沙の手の温かみが伝わってくる。仕草がどこかコケティッシュだった。血圧計を腕に巻くのでも、琢也の手をぎゅっと握って手前に引き寄せ、入院着のパジャマの袖を引き上げるのにも必要以上に腕に触って来る気がしたのだ。琢也の身体から体温計を引き抜くのでも、体温計を探るのに琢也の胸の上を亜里沙の指が這っていくように探っていく。その度に琢也は股間のモノが疼くのを感じずにはいられない。
 「えーっと、体温は・・・36.4度っと、平熱ですね。血圧は・・・、165の95かあ。若干、高めかなぁ。ちょっと失礼しますね。」
 そういうと、琢也のパジャマの襟の間に手を突っ込んでくる。亜里沙の温かい掌が琢也の心臓の上辺りに当てられる。
 「ううん、ちょっと心拍数が高めかなあ。ちょっと緊張してます?」
 亜里沙はかなり近い場所まで顔を寄せて訊いてくる。
 「あ、いや・・・。そのぅ・・・。」
 (緊張してるのではなくて、興奮してる・・・かな。)
 琢也は心の声をもみ消した。
 「でも、このくらいなら大丈夫でしょう。じゃあ、今日一回目の点滴を繋ぎましょうか。」
 そう若い看護師が言うのを聞いて、琢也は最初に看護師の神藤茉優から点滴を受けた時の事を思い出していた。
 (シリンジを落とさないかな。)
 「あっ・・・。}
 「どうしました?」
 「あ、なんでもないです。血液凝固阻止剤のシリンジを落としちゃって。あれ、どこかな。」
 琢也は自分の願いが通じたのかと錯覚する。見ると、看護師の亜里沙が短いワンピースのまま、腰を屈めてベッドの下に落としたらしいシリンジを捜している。茉優の時はぴちっとしたスラックスの尻にパンティラインが浮き出ていたのだが、亜里沙の時は短い裾から今にも下着が覗いてしまいそうなのだった。

ナース前屈み

 「あ、それから千春ちゃんから申送りで樫山さんは当分はシャワーは危ないから止めておいたほうがいいんですって。」
 亜里沙は点滴パックを点滴棒に吊り下げて、滴下量を調整しながら琢也にそう告げる。
 「え? ああ、そう言ってた?」
 「シャワー室で転倒でもしたら大変ですからね。なので、この点滴が終わったらホットタオルで身体、拭きますね。」
 「あ、そう。わかりました。」
 「はいっ。じゃ、また後で。失礼しま~すぅ。」
 そう言ってミニスカナースの亜里沙はカーテンの向こうへ消えたのだった。

茉優

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