トイレ急行

妄想小説


走る女 第一部



 五

 いつもの女がグランドの観客スタンド下に設けられた外トイレに入ったところを双眼鏡で目撃した蛭田好男は、かねてより入念に計画した作戦をいよいよ実行する決心をした。女が決まった曜日にグランドのトイレを使うことが多いのを暫く前から気づいていた。何故決まった曜日なのかまでは判らなかったが、そういう生活パターンなのだろうと想像したのだ。用意していたものを管理人室の自分の机の抽斗から取り出すと作業着のポケットにねじ込み、帽子を目深に被って女が入っていった女子トイレに急ぐのだった。

 好男は誰かに見つかっても怪しまれないように作業服にトイレ掃除用のブラシをいれたバケツを手に提げて女子トイレのドアを音を立てないように開いた。個室の扉は一つが既に閉まっているので何処に入ったかが一目瞭然だった。その隣の奥側にそっと自分の身を隠す。隣でジャーっと水を流す音が聞こえる。それを合図に好男はポケットからビニル袋を取出し、中に封をしてしまっていたハンカチを取り出す。身繕いをしているような衣擦れの音が暫くした後、扉がカタンと開く音がする。好男もすうっと扉を開く。女のタンクトップの背がすぐ傍にあった。音も無くすっと後ろから女の首を羽交い絞めにすると、もう片方の手で薬を染ませたハンカチを口に当てる。
 「あぐっ・・。ううっ・・・。」
 女は声を挙げる間もなかった。ハンカチで鼻と口を塞がれてしまい、否が応でも薬を示したハンカチから流れてくる微かに刺激臭のある空気を吸い込んでしまう。女の力が抜けて身体がくったりして好男に身を任せるようになるのはあっと言う間だった。

薬嗅がせ

 莉緒が目覚めた時、自分が何処に居るのかもすぐには判らなかった。頭が芯の奥の方でジンジン痛い気がして、目の焦点がなかなか定まらない。
 (え、ここはどこかしら・・・。私・・・、何してたのかしら。)
 莉緒はふとお尻が冷たいことに気づく。下半身をみてぎょっとする。ランニングパンツはショーツごと膝まで下されていて、裸の尻でトイレのタイルの床にペタンと座り込んでいたのだ。しかも両手は後ろ手に縛られていて、その縄はブラジャーを丸見えにして肌蹴られた胸の上下にも巻かれているのだった。

莉緒

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る