妄想小説
走る女 第一部
三十六
その日は夫が遅番の日だったが、莉緒は寝ないで待っていた。莉緒としては夫をあまり刺激したくはなかったが、男に命じられてミニスカートで迎えなければならない。わざと夫をその気にさせろというのが男の指示なのだ。
「おかえりなさい、あなた。」
夫が脱いだ靴を揃えるのに短いスカートのまま玄関にしゃがみこむ。その姿を夫の目が追っていることを莉緒は振り返らなくても感じていた。
お風呂はと訊くと、疲れているから明日の朝にすると言って自分の寝室へ入ろうとする夫の肩にそっと手を置く。
「ねえ、あなた。この間準備してた縄って、ある?」
「どうしたんだい? 今、生理なんだろ。出来ないって・・・。」
「うん、そうなんだけど・・・。この間、もう一度縛ってみたいって言ってたでしょ。それが気になってて。今はなっちゃったから出来ないけど、あそこに触らないって約束出来るなら縛ってもいいわよ。したくなったら口でしてあげるから。」
妻を縛ってフェラチオさせるというのを聞いて想像しただけで興奮してきているのが莉緒にもはっきり感じられた。すぐ寝たいからと言っていたのが、気が変ったのは明らかだった。
「いいのかい、ほんとうに。」
「あそこは触らないって約束よ。すごく汚れちゃうから。その代り、口の中にだったら出してもいいわよ。」
少し小声になって耳の横で囁くように呟く莉緒だった。
「ちょっと待ってろ。今、縄を取って来るから。」
夫が自分の寝室に戻っている間に、男へ画像をリアルタイムで送る動画通信をスマホでセットで開始させておいてリビングの隅に目立たない様にこっそり置く。そうしておいて短いスカートから剥き出しの太腿をわざとソファの上に脚を挙げておく。
夫のトオルは縄を手にしてすぐに戻ってきた。目がいつもと違ってギラギラしているのがはっきり分かる。
「いいんだな、莉緒」
返事をする代わりに、こっくりと頷く。
それを合図にトオルはさっと莉緒の背中側に回り込むと手首を取って背中側に回させる。
「ああっ。」
莉緒は切なそうな喘ぎ声を発して見せる。片方の手首に縄を二重に回すと、もう片方の手首も背中の方に回させ、両方を合わせて括り上げる。その余った縄は胸の膨らみの上と下に二重に回すとしっかりと莉緒を縛り上げるのだった。
両手の自由を奪うと、捕えた小動物を見定めるかのように顎に手を当てて上向かせる。
「ああ、何か感じてきちゃう・・・。」
掠れそうになる声でそう切なそうな声を出す。トオルは縛り上げた莉緒の身体をぐっと引き寄せ、唇を奪う。すぐに舌が差しいれられてきて、莉緒も合せて舌を絡める。トオルの手がスカートの方に伸びてくる。
「あ、そっちは駄目。ね、今日はブリーフだったわよね。ズボンだけ下ろして。あとは口でするから。」
その言葉にトオルの喉の奥がごくんと鳴る。
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