グランド猿轡吊り

妄想小説


走る女 第一部



 十六

 陽が高く昇ってくると、莉緒の露出の多い肌を情け容赦なくじりじりと照りつけてくるのだった。莉緒の額には汗が滲んでくるのだったが、拭う事も叶わなかった。大声を出して誰かの助けを呼びたかったが、今の自分の格好を誰かに見られる訳にもゆかないのだと思った。それにブリーフを詰め込まれた上に咬まされた手拭の猿轡の状態では出したくても声も出せないのだった。

 男が戻ってきたのは男が予告した2時間を悠に超えていた。若い頃から身体を鍛えていた莉緒もさすがに憔悴して体力を消耗しきっていた。哀れむような目で男に自由にして欲しいと顔で告げていた。
 「どうした。苦しいか。じゃ、その猿轡だけでも取ってやるか。」
 そう言って手拭の猿轡を解くと、口からブリーフを抜き取ってやる。
 「ぷはっ。はふ、はふ、はっ・・・。」
 ずっと唾液をブリーフに吸い取られていて、莉緒は口の中がカラカラだった。
 「こいつが欲しいんじゃないのか?」
 そう言って男はペットボトルに入った水を莉緒の眼前に翳して見せる。莉緒は口が乾いて言葉を発することも出来ず激しく頷くのだった。
 「ふふふ。じゃ、呑ませてやろう。」
 そう言うと、男は莉緒を縛ったままペットボトルの口を開いて、飲み口を莉緒の口に押し当てる。

無理やり呑ませ

 やっと癒される喉の渇きにむしゃぶりつくようにペットボトルの飲み口を咥えた莉緒だったが、男があまりに性急に莉緒の口の中に入れようとするので思わず咽かえってしまう。しかし男はペットボトルを傾けるのを止めようとしない。口から溢れて喉元から胸元へ中身が零れそうになるので夢中で呑み続ける莉緒なのだった。気づいた時には男が手にしていたボトルの500mlを完全に呑み干していた。
 「ぷはあっ。・・・・。ふう。」
 莉緒はもう息絶え絶えで、はあ、はあと荒い息を継いでいる。
 「さあてと、それじゃ縄を解いてやるから次の命令に従うんだぞ。」
 「うぐっ・・・。め、命令って?」
 やっとのことでそう答えた莉緒だった。男に両手の縄を解いて貰って漸く自分の力で地面に足を付けたつもりだったが、長く不自由な格好を強いられていた為に、膝ががくがくしてよろけそうになる。
 「このまま、すぐにいつもの周回コースを2周走ってくるんだ。いいな。」
 「わ、わかりました。」
 男の意図が判らないまま、とにかく早く自由にして貰いたくてそう頷いた莉緒だったが、足元はふらついてしまう。よろけながらも、やっとのことでゲートを擦り抜けグランドの外に出る。いつもの走り慣れたコースなのに、この日はやけに苦しかった。

莉緒

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