妄想小説
走る女 第一部
二十三
「さ、やってみろよ。パンティは穿いたままでいいが、そのパンティにくっきり沁みが出るまでやるんだぜ。」
男の非情な言葉に唇を噛みしめながら、ゆっくりと陰唇部分を指でパンティの上からなぞり上げるのだった。
ピチャ、ピチャ。
自分の陰唇から洩れてくる卑猥な音に耳を塞ぎたい気持ちで、その部分をまさぐり続ける。
「お前は結構、淫乱なんだな。もうそんなに濡らしたのか。パンティがべちょべちょだぜ。」
「いやっ、言わないで・・・。」
男の見ている前でオナニーをさせられているだけで恥ずかしいのに、言葉でもいたぶられる事に莉緒は泣き出したい気持ちだった。
「よおし、そのぐらいでいいだろう。その汚したパンティはこっちに寄こすんだ。さ、ノーパンでいつものように走ってこい。」
男は莉緒から体液でべっとり汚したショーツを奪い取ると、ランニングパンツを投げて寄こす。莉緒は仕方なくショーツなしでランニングパンツを穿くと管理人室を出たのだった。
「なあ、莉緒。ちょっと教えて欲しいんだけど女の人ってさ、立ってオシッコするってのは出来るものなのかな。」
珍しく早目に帰ってきた夫のトオルが夕食を食べ終えた後に突然そう切り出したのだ。その言葉に莉緒は心臓が止まりそうなほど驚く。
「な、何、突然いいだすの。」
「あ、ごめん、ごめん。実はさ、今日俺のスマホに誰だか判らない奴からメールが送られてきてさ。まあ所謂、素人投稿みたいなやつなんだけどさ。メールに添付が付いていて、いつものアプリじゃ開けなかったんで、この手のものに詳しい同僚の石田に調べといてくれって頼んでおいたんだよ。そしたらそいつが言うには特殊なアプリで作られた動画だっていうんだ。で、その動画ってやつがさ、あいつが言うには女が男用の小便器に向かって放尿してる画像だって言うんだ。」
莉緒はトオルの話に身体がわなわな震えだすのを感じた。しかしそれを何とか夫には悟られないように食器を下げに行きながら誤魔化す。
「まあ、いやね。あなたも観たの、その動画?」
「あ、いや。まだだけど。ちょっと今日は忙しかったんで、明日見せて貰うつもりさ。」
軽くさぐりを入れるつもりで言った言葉だったが、怖れていたことが現実になっている事に莉緒はますます身体が震える。
(そんな事、出来る筈がない)と答えようとして、もしそう言えば本当かどうか確かめるに違いないと思った莉緒は逆の事を言うことにした。
「女だって別に普通に立って出来るわよ。そんなの珍しいことじゃないわ。でも、貴方。そんな変態みたいなビデオ、観るのはやめて。」
「ああ、そうだな。変態ビデオだな。そんなとこ撮って送ってくるなんて。勿論、放送には使えないブイ(ビデオ)だからすぐ処分するように言っとくよ。」
夫の答えにひと安心した莉緒だったが、まだ心配だった。
「ねえ、変な添付のファイルは開いちゃ駄目っていうわよ。ウィルスが仕込んであって大事なデータが壊されたりスマホが乗っ取られちゃったりすることもあるそうよ。」
テレビのバラエティ番組で仕込んだ生半可な知識だったが、何としてでもその画像を夫が観ないように必死で説得する。
「ああ、知ってるよ。そういうの。大丈夫だよ。その手のものは俺は開かないようにするし、あの添付も広げないようにすぐに処分するように言っておくからさ。}
「そうね。それがいいわ。」
そう言いながらも莉緒はまだ身体の震えが止まらないでいた。
「ねえ、貴方でしょ。私の夫に変なものを送ったのは。」
「ほう、ちゃんと届いていたようだな。で、お前の旦那の反応はどうだった?」
「やっぱりそうなのね。そんなのウィルスが仕込まれているかもしれないから見ないで捨てるようにって言っておいたわ。」
「そんなにムキになるなよ。ちゃんと顔が写っているところはカットしておいてやったからさ。」
「何て事をする人なの。」
「お前がちゃんと俺の言うことを聞くようにする為さ。これでよく自分の立場がわかったろ。」
「わ、わかっているわ。何でも言う通りにします。だからあんなもの夫に送ったりしないで。」
「わかったら俺についてくるんだ。」
そう言うと、男は管理人室から外へ向かう。莉緒は必死で後を追い掛けざるを得なかった。
グランドの外に出るとすぐにスタンドの裏側に設置された外トイレのところへ出る。男は辺りを見回してひと気がないのを確認すると、男子トイレに向けて顎で指し示す。
「先にあそこに入って個室で待ってろ。」
そう言って、莉緒に男子トイレに入るよう命じるのだった。
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