妄想小説
走る女 第一部
三十四
莉緒がシャワー室を出て半地下から周回コースの方に上ってみると、少し離れた地面に何か白っぽいものが落ちているのが見えた。何だろうと思って近寄って行きながら、その正体に気づいた時に、莉緒は思わず声を挙げそうになる。それは男に剥された使用済のナプキンだったからだ。
(何てことをするの・・・。)
明らかに蛭田の嫌がらせに違いなかった。放っておく訳にもゆかず、せめてゴミ入れ籠に何かに包んで捨てて置こうと思って手を伸ばしかけた時に子供等の声が聞こえてきて莉緒は動きを止める。もうすぐ近くに来てしまっていて、拾い上げれば自分が何を拾ったか知られてしまうに違いなかった。何も気づかなかった振りをして、そこをそのまま通り過ぎる。そのグランド脇のランニングコースは子供達が通う小学校の通学通路の近道になっていて、もう何人もがそこを通る時間帯なのだった。
「おい、何か落ちてるぞ。」
「ほんとだ。何だ、これっ。」
「おい、拾うなよ。ばっちいぜ、ぞれ。」
「何なんだい、これ。」
「お前、知らねえの? 俺、姉ちゃんがしてるの見ちゃったから何だか知ってんだ。」
「え、何なのか教えろよ。」
子供等の声が聞こえてくるともう莉緒には振り返ることすら出来ずその場を立ち去るしかなかったのだった。
その日も莉緒は総合グランドに着くとまず蛭田の居る管理人室に顔を出す。
「私の付けていたナプキンをあんな所にわざと置いたのは貴方ですね。」
「他に誰がそんな事をするっていうんだ。」
「何の為にそんな事を・・・。」
「ははは。あれは性教育の為さ。近頃の小学生は生理のことも知らないのがいるからな。女が隠そうとしているものにどんなものがあるのか教えてやったのさ。」
「そんな事は保健体育の性教育の中で教えてます。」
「しかし、実物は見せないだろ。汚したナプキンがどんなものなのか。」
「だからって・・・。わたしを辱める為なんでしょ?」
「勿論、そうだ。おまえは俺の性奴隷なんだって分らせる為にな。」
「ひどいわ。」
「で、今日の具合はどうなんだ。」
「え、具合って・・・?」
「生理のことに決まってるだろ。どんな感じなんだ。見せてみろ。」
「そ、そんな・・・。」
抗議したい莉緒だったが、男の命令には従わざるを得ない。ランニングパンツの腰骨の上に指を突っ込むとゆっくり下に穿いているものをショーツごと膝まで下ろす。
男の前に露わにされたショーツに貼り付いているナプキンは真っ白だ。
「タンポンも併用したって訳か。替えも持ってきているんだろ。今、ここで出してみろ。」
「くっ・・・。」
男の仕打ちに只、唇を噛んで耐え忍ぶしかないことを思い知らされる。両足を軽く開くと少し腰を屈めるようにしながら自分の股間に手を伸ばし陰唇から外にぶら下っているタンポンの紐を掴むと、引きずり出す。しかし恥ずかしさに男の目の前に出せず、思わず手を後ろに回して隠す。
「何、隠してるんだ。ここに置くんだ。」
男はテーブルの上にティッシュを数枚敷くと、そこに汚れたものを置くように命じる。恨めしそうな目付きで男を一瞬睨みつけた莉緒だったが、おとなしく隠していたタンポンをテーブルに置く。
「これは多い方なのか?」
「・・・。二日目なので最初の日よりは少ないと思います。」
「ふうむ、そうなのか。残念だな。」
「どういう意味です。」
「まあいい。新しいものを着けてみろ。」
莉緒は腰に付けてきたウェストポーチから新しいタンポンを抜き取る。
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