国旗掲揚台

妄想小説


走る女 第一部



 十四

 (縛られるのだわ・・・。)
 捩っても緩まないように、手首に二重に撒きつけてから結び目を付けているのが気配で感じられる。その自由を奪われた両手が縛り上げたロープで引っ張られる。目が見えないまま引かれていくので、不安で少しずつしか進めない。
 莉緒がグランドの中に入ったのはまだ二度切りだった。グランドの中のスタンドはどういう構造になっていたか、はっきりとは思い出せない。
 (確か観客席と観客席の間にガラス張りの放送席のようなものが半地下にあって、その上は国旗掲揚台のようなものがあった筈だわ。)
 莉緒は自分が連れていかれる辺りの光景を思い浮かべる。自分が入ってきたゲートからは死角になっている筈だが、四隅にあるゲート全ての外側から自分が居るところは見えるのか、見えないのか自信がなかった。
 突然カラカラっという乾いた音が聞こえてきた。音は止まずに鳴り続けていると思っていたら、自分の両手が上の方へ牽かれ出したことを感じる。上へ吊られていくと同時に壁際ぎりぎりまで引き寄せられていく。
 (この壁の上側に国旗掲揚台のポールが三本立っていた筈。そのうちのどれかに両手を縛っている縄が括り付けられたのだわ。)
 最早両手を頭の上にまで万歳の形に吊り上げられ、下ろすことも叶わなくなったところで漸く引かれる縄の動きが止まった。爪先は地面に着いているが、踵は少し浮いてしまっている。ぎりぎりの長さで吊られているので、最早数歩すらその場から動くことも出来ない。文字通り身動き出来ない状態にさせられてしまったのだった。その状態になったところで男は莉緒の頭からアイマスクを取り外す。

グランド吊り

 「いったいこんな格好にさせて、どうしようって言うの?」
 「ふふふ。お前に少し甲羅干しをさせてやろうと思ってね。」
 「甲羅干し? どういう事?」
 確かに既に陽が莉緒の方に差し込んできていた。
 「まさか、このまま繋いだまま放置するんじゃないでしょうね。」
 「おいおい。あんまり大きな声は出さないようがお前自身の為だぜ。」
 莉緒は男の言葉にはっとなる。周りを見回すとグランド内には男の他には人っ子ひとり居ない。すぐに四隅のゲートを見渡してみるが、辛うじてゲートの外からも覗かれない場所のようだった。
 「グランドの中から声がすれば何だろうって見に来る奴が居るだろうからな。そうなると困るだろ?」
 そう言って無防備な腰の周りに男が手をやってランニングパンツをずり下げようとする。
 「や、やめてっ。うっ・・・。お願い、脱がさないで。」
 思わず声を挙げてしまったがすぐに気付いて小声になる。男は莉緒のランニングパンツを腰骨のすぐ下あたりまでずり下げたところで手を止めた。反抗的になれば全部下してしまうぞと言わんばかりだった。
 「只の甲羅干しじゃつまらないからな。お前には猿轡を咬ませておいてやる。そうだ。折角猿轡をするんだから、ちょっと趣向を凝らすとするか。」
 そう言うと、男は莉緒の前で作業着のズボンを脱ぎ始める。莉緒の見ている前で恥ずかしくはないのか、下半身下着一枚になる。

莉緒

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