妄想小説
走る女 第一部
十七
身体の異変に気が付いたのは、2周目に入ってすぐのことだった。股間がやけにジンジンするのだ。すぐにそれは尿意なのだと気づく。しかも強烈な尿意なのだった。
(えっ、どうして? ああ、洩れそう・・・。)
莉緒はそれが、先程無理やり呑まされたペットボトルの水に仕込まれた強力な利尿剤のせいなのだとはまだ気づいていなかった。
(あの北側のゲートの手前に女子トイレがあったわ。あそこまで何とか辿り着ければ・・・。あの男に遭う前に何としてもあそこのトイレに飛び込まなければ・・・。)
そう思って必死に走り続ける莉緒だった。しかし急いで走れば走るほど、薬の効き目が昂じてきて余計に尿意が高まるなどとは思ってもいないのだった。
グランド外側の周回路の最後のコーナーを曲がって、北側ゲートとその手前の女子トイレが見えてくる。
(ああ、何とか間に合った。あそこに着けさえすれば・・・。)
そう思った莉緒だった。走るスピードを一気に加速する。そして女子トイレに何とか辿り着き、扉のドアノブに両手を当てた莉緒に愕然とするような出来事が起こる。女子トイレが施錠されていて開かないのだった。
(えっ、どうして・・・?)
いつもは開いている筈の外トイレが完全に施錠されていて開かないのだった。
「どうしたんだい? 女子トイレのドアノブにしがみついたりして。」
突然聞こえてきた声に莉緒が顔を上げると、何時の間にか管理人が傍に来て立っている。
「あ、貴方・・・。管理人なんでしょ。トイレの鍵、持ってるわよね。ね、開けてください、ここを。」
しかし男は悠然と腕を組んで動こうともしない。
「トイレだったら、あっちの方が開いてるぜ。」
そう言って男が顎で指し示すのは隣の男子トイレの方だった。
「え、でも・・・。」
しかし最早莉緒には議論している余裕はなかった。もう一刻の猶予もないのだった。莉緒は辺りをさっと見回す。幸い人の気配は見当たらない。意を決して男子トイレに急ぐしかなかった。
男が言うように、こちらのドアは難なく開いた。しかし小用便器の反対側に並ぶ個室を見て、莉緒は絶望的になる。三つある個室はどれも「故障中」の貼紙が貼ってあるのだった。試しに走り寄って取っ手を引っ張ってもびくともしない。使用されないように中からロックが掛かっているのだった。
「遠慮せずに、そっちを使えよ。」
男が莉緒に続いて男子トイレに入ってきたらしく、個室の反対側に並ぶ男子用小用便器の方を顎で指し示す。
「そ、そんな・・・。」
しかしパニックになっている莉緒にはもう冷静に考える力もなかった。
「こっち、見ないで。」
男にそう言うと、ランニングパンツをショーツごと膝までおろして脚をがに股に開くと小用便器に股間を近寄せる。その瞬間、莉緒の剥き出しにされた股間の割れ目から激しくゆばりが迸り出る。
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