妄想小説
走る女 第一部
三十三
「い、いや、見ないでっ・・・。」
剥き出しにされたショーツには既に血糊で汚れてしまっているナプキンが貼り付いているのが丸見えになる。好男は近づいてきて剥き出しにされたショーツに貼り付いているナプキンをベリッと剥す。それを莉緒の目の前に持ってきて翳すのだった。
「これを見られるのがそんなに嫌か?」
「あ、当り前でしょ。そんなもの、翳さないでっ。」
「ふふふ。お前にはこれからランニングに出て貰う。ただし今穿いているのじゃなくてな。」
そう言うと、今剥したばかりのナプキンが貼ってあったショーツの真ん中を足で踏んで足首まで下ろしてしまう。
「さ、脱ぐんだ。」
好男はショーツを足で床に踏みつけてたままで、莉緒の膝を片方ずつ手を当てて上に引っ張り上げショーツとランニングパンツから足首を抜かせてしまう。完全に脱げてしまったところで男は布きれのようなものを尻のポケットから取り出す。
「何なの、それっ。」
「代りのランニングパンツさ。これを穿いていつものコースを走ってくるんだ。」
「えっ?」
好男は代わりと言っているランニングパンツを今度は莉緒の足首に片方ずつ穿かせて、腰まで引っ張り上げる。縛られたまま莉緒が見下ろすと、穿かされているのは殆ど真っ白にちかいショーツ型のランニングパンツらしかった。穿かせてしまうと、莉緒の手を縛っている縄を解き始める。脱がされた莉緒のものだったランニングパンツは男に回収されてしまう。
「こ、これで走ってこいっていうの?」
「そうさ。早くしないと染みが広がってきちまうぜ。」
莉緒はそう言われてはっとする。ショーツもナプキンもない状態なのだ。
「2周走ってきたら、今日はそれで赦してやるからここへ戻って来るんだぜ。さ、行って来い。」
男に尻を叩かれて、莉緒は慌ててシャワールームから出口の方へ急ぐ。
(とにかく早く戻って来なくちゃ。)
そう思うと、ガラス扉を擦り抜けて何時もの周回コースを走り始めたのだった。
(2周ぐらいだったら、なんとか間に合うかもしれない。)
何の根拠もなく、莉緒にはそう信じて走るしかないのだった。時々擦違う犬を散歩させている人たちの横をすり抜けて、どんどん走って行く。しかし2周目に入ってから、擦違う人の目線が自分のそれとなく下の方を向いているような気がして嫌な予感がしてくる。しかしランニングパンツを見るのが怖かった。どんな目で見られようとも知らぬ振りをしてそのまま走り続けるしかなかった。やっとのことでさっき走り出てきた放送室のあるスタンド下の半地下への出入り口が見えてきた。
(あと少しだわ。)
その安心感から、ちょっと自分の股間を見てしまってはっとなる。
股間の部分が真っ赤に染まってしまっていたのだ。
(いやっ、こんな格好で走らされていたなんて・・・。)
股間を手で抑えたいのをかろうじて我慢して、何も気づかない振りを続けてスタンド下の半地下へ飛び込んでいったのだった。
シャワー室に男の姿はもうなかった。脱がされた自分のランニングパンツと生理用ショーツはシャワー室の隅に投げ捨てられたように置いてあった。それを拾い上げると女性用トイレに急ぐ。赤く染まってしまった男に穿かされたショーツは丸めて汚物入れに投げ入れ、トイレットペーパーで股間を拭ってから更にトイレットペーパーを大量に巻き取ると何重にも折り畳んで穿き直した自分の生理ショーツの裏側に当てた上でランニングパンツを穿くのだった。
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