管理人室忍込み

妄想小説


走る女 第一部



 十二

 物陰からじっと管理人室の様子を窺っていた莉緒は、管理人が竹箒などの掃除用具を持ってグランドの逆側に姿を消すのを待って、さっと管理人室に忍び込む。莉緒が想像した通り、管理人室の入り口は施錠されていなかった。しかしそれは戻ってくるまであまり時間が無いこととも言えた。莉緒がまっしぐらに向かったのは管理人のものらしい机だ。抽斗が幾つかあるのでそこだけは確認しようと思ったのだ。上から二番目の抽斗の中に見覚えのある物が見つかった。麻縄の束だ。しかし莉緒がゴミ入れ籠に捨てたものを拾っただけだと言われてしまうかもしれないと思った。
 (もっと何か確実な証拠になるものを見つけなければ・・・。)
 莉緒がそう考えているところに背後でガタンと音がした。
 「おい、お前。そこで何してる。」
 振向いた莉緒の目にはさっきグランドの向こうに消えた筈の管理人が突っ立っていたのだ。
 咄嗟に言い訳を考えたがうまい事が思い浮かばない。そこで言い訳をするよりカマを掛けてみることにした。
 「私、もう分かっているのよ。」
 「分っている? ほう・・・、何を?」
 「な、何をって・・・。貴方、管理人だからグランドの鍵を自由に使えるでしょ。」
 莉緒の言葉に一瞬管理人の眉毛がぴくりと動いた。
 「ふうん、そういう事か。お前、案外馬鹿じゃなさそうだな。」
 「やっぱりそうだったのね。何が目的なの?」
 「目的? ふん、知りたいのか。じゃ、これを見せてやろう。」
 男が莉緒に近づいてくる。一瞬、莉緒は逃げたほうがいいのか迷う。逃げるなら今しかないと思ったのだ。しかし真相に近づけるかもしれないと思うと、今を逃すわけにもいかないと思う。
 男がロッカーからノートパソコンを取り出して机の上に広げ、何やら操作していたが、やがて画面上に現れたのは女の子の画像だった。顔は半分写っていないのでどんな女の子なのか不明なのだが、衣服は莉緒と同じようなトレーニングウエアを着ている。画面の反対側から指示されているらしく、最初は嫌々をしていたがおとなしく頷くと下半身のトランクスとショーツを一緒に引き下げ始めたのだった。

リベンジポルノ画像

 「何なの、これは?」
 「ふふふ。いわゆる動画サイトってやつだ。今では簡単に、こんな風にネット上に画像をアップ出来るんだぜ。一旦、アップされたが最後、消しても消してもコピーがばら撒かれてまた誰かがアップするって仕組みさ。」
 「これと私がどういう関係があるって言うの?」
 「つい最近だが、ある女がグランドにランニングウェアの姿で侵入してきてね。こともあろうか、グランドのど真ん中でこいつみたいにタンクトップを捲り上げ、ショーツも膝まで降ろして陰部を曝しだしたって訳だ。このグランドには監視カメラがあってね。そこに映像はばっちり残ったって言う訳さ。」
 「ま、まさか貴方・・・。」
 「もう、それ以上は説明は要らんだろ。」
 莉緒は身体の力が抜けてゆき、わなわなと震えながらその場にしゃがみ込んでしまう。
 「そ、そんなもの・・・。まさかアップロードしたりしないわよね。」
 「さあ、どうかな。何せ、不正侵入者だからな。警察に届けるか、他の方法にするか、思案中って訳さ。」
 「脅してるのね。」
 「さあ、それはどうかな? お前次第なんじゃないか?」
 「わ、わたしに・・・どうしろと言うの。」
 男は不敵ににやりと笑う。
 「俺は従順な女が好きなんでな。従順な女なら言うことは聞いてやるかもな。」
 「従順って・・・。どういう事?」
 「ちゃんと相手の事を忖度して、自分から相手がこうしたいだろうってことを汲み取って、それを自分からさせてくださいって頼むようなことさ。」
 そう言いながら、男は両手の指を何かを揉みしだくような格好をしてみせる。
 「え、そ、それは・・・。わ、わかりました。ううっ・・・。わ、私のここを揉んでください。それでいいのですね。」
 そう言いながら、自分の乳房を下から両手で持ち上げるような仕草をして男の方に自分の胸を突き出す。
 「ここを揉んでだと? ここって何処だい。」
 「うっ、ここです。」
 そう言いながら唇を噛んで口惜しさを顔一杯に表しながらタンクトップの裾を持ち上げてブラジャーを露わにする。
 「へえっ。そこしかないのかい?」
 「えっ? うっ。し、下も揉んでいいです。」
 恥ずかしさに男の方を向いて居られず、俯いてぼそっと口にする。
 「お前の下ってのは何処のことだ?」
 「下って・・・。股間の事です。」
 「股間を揉んで欲しいのか。」
 「いえっ。あ、いや。そうです。股間を揉んで欲しいです。」
 「ちゃんとお願いしてみろよ。」
 「あ、あの・・・。わ、わたしのおっぱいでも、股間でもお好きな方を揉んでいいです。」
 「揉んでいいです?それじゃ、俺が無理やり揉ませたみたいじゃないか。」
 男の意図を悟って、莉緒は完全に観念する。
 「私が間違っていました。私が貴方におっぱいとおまたを揉んで欲しいのです。どうか、お願いします。」
 「そういうのを従順と言うんだ。よく憶えておくんだな。さ、こっちへ来い。邪魔な手は後ろへ回すんだな。」
 そう言われて男の方に向かって一歩踏み出した莉緒は両手を後ろ手に組んで男に身体を任せる格好になる。
 「何か邪魔なものがあるな。」
 男はそういうと、莉緒のブラジャーの真ん中を指で引っ掛けて引き寄せるとパチンと音がするように滑らせる。
 「ああ、済みませんでした。」
 そう言うと背中の手を上に回してブラジャーのホックを外す。改めて両手を前に回してブラジャーを乳房の上に引き上げ裸の乳房を男の前に晒す。視線を横にずらして、男の手が自分の乳房を蹂躙するのを覚悟をしながら待ち受ける。しかし男の手はトランクスの中へ伸びてきたのだった。

莉緒

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