トイレ辱め

妄想小説


走る女 第一部



 十八

 (間に合った・・・。)
 よくこんな量が出ると、莉緒は我ながら驚いているが、たっぷりと利尿剤を含んだ500mlの水を呑まされた後だから当然の事なのだが、その事に莉緒はまだ気づいていない。放尿が終りに近づくと次第に勢いを喪ってくるので、床に垂らしてしまわない為に陰唇をより便器に近づけなければならなかった。
 最後の滴が垂れ落ちて、もう一度いきんでみて出ないのを確かめてふと我に返り、男が近くに居たことを思い出す。おそるおそる顔を横に向けて莉緒は愕然とする。男がビデオカメラを自分に向けて構えていたのだ。その手にしたカメラのレンズの横には録画中であることを示す赤いランプが点っていたのだ。
 「やめてっ。何て事するの。」
 「何て事してるのは、お前の方だろ。ここは男子トイレだぜ。それを男子用便器に股間を押し付けてションベンとは呆れたもんだ。」
 男の侮蔑の言葉に自分のしたことを改めて思い知って、恥ずかしさに顔を上げられなくなる。
 「ほら、見てみろよ。よく映っているぜ。」

盗撮教え

 男がカメラのモニタ画面を莉緒に見せる。そこには二度と観たくないようなあさましい格好の自分がしっかりと捉えられているのだった。
 「そ、そんなもの・・・。どうするつもりなの。」
 「さあてね。それはお前の心掛け次第ってやつだ。」
 「私が貴方のいうことを聞かなければ、画像をネットにアップするっていうのね。卑怯だわ。」
 「おい、いつまでその裸の股間を丸出しにしてるつもりだ。誰がいつ入ってくるか判らないんだぜ。」
 男の言葉にはっとなる。こんなところを他の誰にも見られる訳にはゆかないのだった。ペーパーで股間を拭いたいのだが、それも叶わずそのままショーツとランニングパンツを慌てて引き上げると男子トイレの出入り口の扉を薄く開く。人影はあったが、まだだいぶ遠くだったので思い切って走り出ることにした莉緒だった。誰かに目撃されたかどうかも確かめることさえ出来ないのだった。

 男子小用便器に向かって放尿させられたのは莉緒にはショックだった。しかもその姿をビデオカメラに撮られてしまっている。もはや外に出る元気もなかった。しかし男からは同じ時間にグランドに来るようにきつく命令されているのだった。
 莉緒は重い足を引き摺るように市営総合グランドに向かった。もはや走っていくのもしんどかった。それには男に命じられた自分のスマホを持ってくるように命じられたのもあった。ランニングに出る時は身を軽くする為にいつもはスマホを持たない。それでウェストポーチに入れて腰に巻いて来たのだった。
 「スマホはちゃんと持ってきたな。」
 莉緒は男が居る管理人室へ入るとそう訊ねられた。
 「はい。」
 頷くとポシェットから取り出して見せる。
 「こっちへ寄こせ。そのポシェットごとだ。」
 莉緒は素直に男に渡すしかなかった。スマホを受け取ると、すぐに電源を入れている。
 「パスワードは何だ。」
 教えるしかなかった。
 「リオ0629です。リオはカタカナ、あとは数字です。」
 「ふむ、莉緒というのはお前の名前だったな。0629はさしずめ結婚記念日ってところだな。」
 図星を突かれて、莉緒は何でも見透かされているような気持ちになる。しかも自分の名前まで既に知っている様子だった。男はパスワードを打ち込んで難なくスマホを立ち上げると何やら中身をどんどん探っていく。
 「このトオルってのがお前の旦那か。何をやってる? あ、仕事の事だ。」
 「XX放送局の局員です。今はアシスタント・ディレクターの見習いを修行でやってます。」
 「ほう、放送局か。それは都合がいい。」
 莉緒には男が都合がいいと言った意味は図りかねたが、嫌な予感だけはしたのだった。
 「よし。こいつは預かっておくから、何時もどおり走ってこい。ウェストポーチも走るには邪魔だろ。」
 「わかりました。」
 仕方なく莉緒は自分のスマホを男に預けたまま、管理人室を出ていつものグランド外側の周回路を走り始めたのだった。

莉緒

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