秘書登場

妄想小説


走る女 第二部(46~)



 四十六

 「という事ですので、ゲートボール大会自体の運営はすべて自治会のスタッフの方がやってくれるそうです。管理人の蛭田さんにお願いしたいのは、大会の開催中、こちらの管理人室を市長の控え室にお貸し頂くことと、こちらで市長にお昼を採って頂くこと。あ、弁当等は私の方で準備致します。えーっと、そんなところでしょうか。」
 市営総合グランドの管理人、蛭田好男は、まだ新米らしく慣れないのか、たどたどしい説明を何とかこなしている市長秘書という若い娘を、珍しい物でもみるような目つきで話を聞きながら眺めていた。
 グランドにランニングの練習に来ていた西岡莉緒をすっかり自分の性奴隷として調教し、何でも言うことを聞かせることが出来るようになって、思う存分弄んでいたのがそろそろ飽き始めていた頃だったので、初々しい新人秘書が新鮮に感じられたのかもしれなかった。
 「まだ若いのに、よく出来るね。市長の秘書だなんて、いろいろ難しいんだろうね。」
 「あ、いえっ。私なんか、やっとやってるって感じで、至らないことばかりなんです。ですから、今度のゲートボール大会の事、よろしくお願いします。」
 そういうと、市長秘書はぺこりと頭を下げるのだった。

 「早乙女 花音(かのん)か。なかなか、いい女だな。」
 市長秘書が残していった名刺で名前を確認すると、どうやってその娘をものにするか策略を巡らす好男だった。

 「ねえ、貴方。いいかしら。そのアルバイト、受けちゃって。」
 「ああ、僕の休みの日にまで被らなければね。僕も休みはまだ、そんなに自由には取れない立場だから、お前も仕事で擦れ違いばかりみたいになっちゃ嫌だからね。」
 「それだったら大丈夫よ。週三日だけって約束だし、貴方のシフトに合せて出勤日を調整して貰えるそうだから。」
 莉緒は夫に市営総合グランドで管理人の雑用を手伝うというアルバイトを受けることを夫のトオルに何とか了承して貰ったのだった。しかしそれは管理人の蛭田好男が仕組んだもので、トオルには非正規雇用の枠組みでと説明はしてあったが、蛭田が個人的に来るように命じているだけで、市からの雇用というのは真っ赤な嘘だったのだ。蛭田は何でも命令を聞かざるを得ない莉緒をいろいろ便利に使おうと、管理人室で雑用のアルバイトをすることになったと莉緒の夫に嘘を吐かせたのだ。

花音

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