妄想小説
美教師を奈落に貶める罠
四十五
「や、やべえ。こいつ、すげえ強いぞ。に、逃げようぜっ。」
男たち三人は慌てて逃げ去っていく。そこへ遠くへ離れていた美鈴が戻ってくる。
「あ、ありがとうございました。助かりました。あの・・・、貴女は?」
「今度貴方達の学校に赴任することになっている早坂久美と言います。」
「え、うちに赴任してくる先生・・・?」
まさかの展開に美鈴も仰天するのだった。
「えーっ。それではここで先日産休に入られました稲葉先生に代わって保健体育の授業を担当して頂く為に本校に転任されました早瀬久美先生をご紹介します。早瀬先生は元ユニバーシアード大会の日本女子合気道競技の選手代表だった方で、保健体育の授業の他に女子弓道部の顧問も務めていただくことになっております。」
生徒の間でどよめきが沸き起こる。
「おい、アイツ。この間、美鈴との間に割って入ってきた奴じゃねえか。ヤバいのが入ってきたぜ。」
そう噂するのは美鈴を無理やり付き合わせようとしていた三人組だった。
その少し後方で、凛とした表情で壇上に立つ早瀬久美を不敵な笑みを浮かべて注目していたのは氷室恭平だった。
(やっと井上薫の後釜になる女教師が現れたか。どうやって陥れるか今から楽しみだな。)
恭平と同じように新任教師を凝視していたのは、井上薫自身だった。
(恭平はきっとあの新任教師に狙いを付けている筈だわ。)
薫は新任教師に待ち受けているかもしれない卑劣な罠への心配をするのと同時に、自分が解放されるかもしれないという期待にも胸膨らませているのだった。
完
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