妄想小説
美教師を奈落に貶める罠
二十
「さてと。それじゃあ、これを首に掛けて貰おうか。」
男は薫が後ろ手錠で何も出来ないので用意してあったらしし看板のようなものを薫の首に掛ける。
「な、何なんですか、これは・・・。」
「お前が罪を犯したことを認め、罰を受けることを了解した証しだ。その札を提げたところを証拠として写真に撮らせて貰う。」
薫はもう今更何をされても仕方がないのだと諦めきっていた。
ストロボが焚かれ罪状と罰を受け入れる旨を書かれた札を提げている写真を撮られてしまう。
「あ、あの・・・。ここに書かれている罰って、何なのですか?」
「それは執行場所に行けばすぐに分かるさ。」
「執行場所? え、それはここではないのですか?」
「ここは事務所だ。ちょっと手狭だからな。エレベータで上へあがるんだ。」
「えっ、エレベータでって。この部屋からこの格好で外に出させるんですか?」
渡されたTシャツは股下ぎりぎりまでの丈しかないのだ。その上、後ろ手に手錠を掛けられているのが丸見えだった。
「荷物配送用のエレベータだから、一般客は入って来ない。ただ運が悪けりゃ従業員には見られるかもな。」
「そんな・・・。せめて手錠だけは隠させてください。」
「じゃその札を背中で持って手錠を自分で隠すんだな。さ、行くぞ。」
男は札を薫の首から外すと背中の手に持たせる。薫は仕方なく手錠が隠れるように札を裏返して背中で持つのだった。
薫が連れていかれたのは、スーパーの最上階にあるらしい一つの部屋だった。元々は会議室か何かのようだったが、什器などは全て片付けられていて簡素なパイプ椅子が一つあるきりのがらんとした部屋だった。部屋の真正面は壁が一面のガラス窓になっていて、外の様子が見下ろせるようだった。それはしかし窓際に立てば外から丸見えになることを意味していた。
部屋の中央に置いてあるパイプ椅子の後方には三脚に据えられたビデオカメラが設置してある。薫はガラス窓を背にしてビデオカメラの正面にしゃがむよう命じられる。
男は後ろ手で薫が持ってきた札を取り上げると、再び文字の書いてある面を表にして薫の首に掛けるとビデオカメラの録画ボタンを押して椅子に座り薫と向き合う。
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