妄想小説
美教師を奈落に貶める罠
十
「何だ、これは?」
「うっ・・・。せ、生理用品・・・です。」
男は明らかに中身が何であるか分かっていて質問したようだった。
「お前、今生理中なのか。」
「い、いえっ。違います。急になった時の為に持ち歩いているだけです。」
「ふうん。こんなものを装着するのか・・・。」
男は興味深そうに中身を一つひとつ取り出しては吟味している。
「あの・・・、それはもういいんじゃありませんか?」
「お前が昨日、持ちだそうとしたものはコンドームだったそうだな。え、どうなんだ?」
「うっ・・・。は、はい。そうです。」
「だとすると、この生理用品ってやつも店の棚から持ちだした可能性があるな。」
「いえっ。そんなことはありません。」
「一応、店のストックと照合させて貰うからな。さてと・・・。何か装飾品とかアクセサリとかを身に着けているか?」
「あ、あの・・・。胸にペンダントと・・・。あとはイアリングと、時計ぐらいだと思います。」
「じゃ、それも見せて貰おうか。」
「えっ、だってそんなもの。このお店では扱っていないのじゃありませんか?」
「万引きをやるような奴はだいたい他の店でもやってるもんだ。だから一人でも万引き犯を捕まえたら他の店でもやったものがないか調べて店同士で情報を共有しあう仕組みが出来ているんだ。最近万引きされたものの一覧が写真付きで回されてきているんでな。そのリストと照合してみる必要がある。」
「でも私が身に着けているのは正真正銘、私が買ったものです。」
「だから、万引き犯の言い分なんて信用出来ないってさっきから言ってるだろ。さ、そのペンダントとやらを外して見せて貰おうか。」
「あ、あの・・・。この手錠を外して貰わないと・・・。」
「いいよ。じゃ、俺が外してやるよ。」
男は椅子から立ち上がって、いきなり薫の首に手を伸ばしてくる。
細いチェーンは探り当てたようだが、ブラウスの襟に隠れているので男は勝手に薫のブラウスのボタンを二つほど外してしまう。
「あ、いやっ。」
しかし自由になる手が片手では防ぎようもない。それに変に抵抗して心証を悪くしたくないという気持ちもあって、薫は男のするがままに任せることにした。
「そして・・・と、時計とイアリングも外させて貰うよ。」
時計は手錠を掛けられている方の左手ですぐに外し取られてしまったが、イアリングは慣れていないようで、薫は自分の髪や耳たぶが触られるのをおぞましく思いながらもじっと堪え忍ぶ。男は薫から外し取ったアクセサリ類をデジカメで一つひとつ撮っていく。
「さてと・・・。次は身体検査だな。」
「えっ? 身体検査ですって・・・。ど、どうして? あ、あの・・・。捕まったのは昨日のことですよ。今更身体検査だなんて。昨日の人はそんなこと、しませんでしたよ。」
「だから昨日の奴は臨時の代理だったって言ってるだろ。本来は掴まえた当日にもしないといけないんだが、あいつが忘れていたんだよ。それに店から盗んだ衣服は当日はすぐに着れないから、翌日以降に身に着けていることが多いってのは常識なんだ。一つひとつ店の在庫品と照合する必要があるからな。言っておくが、衣料品はこの店でも扱っているからな。まずはスカートから脱いで貰おうか。」
「え、スカートを取れって言うの?」
「ああ、そうだ。服をチェックするのに手錠が邪魔になるからな。手錠を外しても逃げられないようにまずはスカートを取らせるのがセオリーなんだ。まさかスカート無しじゃ走って逃げれないだろ?」
「え、そんな・・・。私、逃げませんから。手錠だけ外して貰えませんか?」
「駄目だ。規則なんでね。今まで、そう言って突然逃げ出した奴が何人も居るんだ。」
「うっ。わ、わかりました・・・。」
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