妄想小説
美教師を奈落に貶める罠
十六
朝のホームルームが終わったところで教室から出て来る氷室恭平を廊下で待ち受ける薫は他の者には聞こえないように小声で恭平に告げる。
「放課後になったら第四校舎の屋上に来てっ。」
それだけ言うと、恭平の顔も見ずに急いで職員室へ戻る薫だった。
前回話をするのに使った生徒指導室は他の生徒や教師が入ってくる可能性があるので、普段は立入禁止になっている校舎の屋上を選んだのだった。施錠されているが鍵は職員室のキーボックスにあるので、こっそりそれを持ちだして先に屋上にあがって恭平が来るのを待つことにしたのだった。
「氷室クン。約束のモノ、持ってきたわ。これでいいんでしょ? 川野さんが秘密にしておきたいもの、渡してくれるわね。」
薫は鞄の中に入れて来たコンドームのパックを取り出す。
「先生。嘘はいけないな。」
「え? 嘘って・・・。」
「それ、どっかで買ってきたんだろ? 俺は万引きをして持ってこいって言ったんだぜ。」
「え・・・。だから、私・・・。」
「万引きしようとしたけど捕まっちゃったんだろ。」
「ど、どうしてそれを・・・。」
「美鈴が全部吐いたんだよ。アンタに店まで連れていかれて、私のせいで先生が万引きをしたんだって言わせようとしたんだろ?」
「美鈴さんがそんな事を言ったっていうの?」
「ああ、全部ね。美鈴は脅されてなんかいませんってきっぱり言ったそうじゃないか。そしたらすぐに帰らせてくれたって言ってたぜ。」
「み、美鈴さんたら・・・。そんな事まで。うっ、そ、そうよ。おかげで私は大変な目に遭ったのよ。」
さすがに手錠を掛けられて裸同然の格好にまでされて、その上でバケツに放尿するところまでビデオに録られてしまったとは言えなかった。
「いい経験になったろ。弱みを握られた者の気持ちが、よく分かった筈だな。」
「よ、弱みって・・・。まさか・・・。」
「どうせ、店の奴に頼み込んで警察と学校には知らせないでくれって頼み込んだんだろ?」
「うっ、そ、それは・・・。」
「だったら俺にも頼み込まなくっちゃね。どうか警察とか校長とかには話さないでくださいってね。」
「え、そ、それは・・・。」
「そうだ。その前にまずは俺に謝らなくっちゃね。さっき嘘を吐いたろ。まずはその事から謝って貰わなくっちゃね。謝り方はこの前教えたから分かってるよな。」
「うっ・・・。わ、わかったわ。」
恭平は薫に背を向けて話していたが、薫はその背後で力なく膝を折って冷たいコンクリートの床の上に跪く。恭平が薫の方に振り向くのを見て、両手を突いて土下座の格好を取る。
「嘘を吐きました。あの品物はコンビニで買ってきたものです。万引きしたものは没収されてしまいました。だから買うしかなかったのです。嘘を言って本当に申し訳ありませんでした。ううっ、痛っ・・・。」
頭の前で床にぺたんと突いていた両手の上に恭平が靴を乗せて踏みつけたのだった。
「い、痛いです。ど、どうか赦して・・・。」
恭平は両手の上に乗せた靴を一旦外したが、今度は土下座している薫の頭の上に乗せて踏みつけてきたのだった。
「ああ、赦してぇ・・・。」
恭平が足をぐいぐい押し付けるので、薫はおでこをコンクリートの床に押し付けられる。
「じゃ、罰を与える。スカートを脱ぐんだ。」
「え? そんな・・・。わ、わかったわ。いえ、わかりました。」
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