妄想小説
美教師を奈落に貶める罠
十四
男が薫の前に置いたバケツを床から取り上げると薫に手渡す。薫はバケツを受け取ってみたものの、どうやって立ったままバケツの中に放尿すればいいのか分からない。しかしもう一刻の猶予もないのだった。取り敢えず脚をがに股に大きく開くとバケツを股間に押し当てるのだった。
ジョボジョボジョボジョボッ・・・。
思わず耳を塞ぎたくなるようなけたたましい音がスチールのバケツから事務所内に響き渡る。しかし天井から吊られた片手とバケツを持つもう片方の手では耳を塞ぎようもないのだった。
最初のうちは勢いよく迸りが出て何とかバケツの中に流し込むことが出来ていたのだが、だんだん勢いを失ってくると一部は内腿を伝って床の方に垂れてしまうのを防ぐことは出来ないのだった。最後の一滴を絞り出すように身体を震わせて出し切った時には、薫の足許にはバケツに採りそびれた小水が薄っすらと沁みを作ってしまっていた。
ふと男が静かなことに気づいて、男の方を振り向いてみて薫は蒼褪める。男の手にはデジカメが握られていて薫の方に向けられている。そのレンズの右上には明らかに動画撮影中を示す赤いランプが点灯しているのだった。
「な、何するのっ。やめてって。写さないでぇ・・・。」
薫は必死になって嘆願するが、すべては後の祭りなのだった。
男は薫の放尿シーンを撮り終えると再び薫を一人残して部屋を出ていってしまう。薫は尿がたっぷり入ったスチールバケツを床に置くことも出来ず、悪戯坊主が廊下に立たされているかのような格好でバケツをぶら下げて男が帰ってくるのを待つしかないのだった。
暫くそのまま立たされていた後、漸く男が薫の衣服を持って戻って来る。天井から片手を吊られたままだった手錠もやっと外して貰えたが、衣服を身に纏う間に、男から二つのことを言い渡される。洩らしてしまったバケツを綺麗に洗って、床の沁みもモップで綺麗にすること。そしてもう一つは翌日同じ時間に再びこの事務所へ出頭することというものだった。薫はまさかの失態を観られビデオにまで撮られてしまったことに意気消沈して何も言い返せず、ただ(わかりました)と深く頷くことしか出来なかった。
店を出た薫は動転した気持ちを静める為に早く家に帰りたかったが、ふと恭平に言われたコンドームのパックを持っていないことに気づいてしまった。
(そうだわ。あれが無ければ万引きという犯罪まで犯してしまったのに氷室君から川野さんの秘密というのを取り返すことが出来ないのだわ。)
さすがに同じ店で買い取るという訳にはゆかないと思った薫はわざわざ電車を乗り継いで隣町の別の店で探すことにした。同じ町の中では自分の高校の生徒に出遭ってしまうことも考えられたからだ。
降りたことのない駅だったが、駅前に出て試しにコンビニに入ってみる。
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