独り階段上り

妄想小説


美教師を奈落に貶める罠



 三十五

 翌日、薫はひと気のない校舎に独りで来ていた。勿論誰一人居ない訳ではなく、グランドでは運動部が幾つか部活動の練習をしているのだ。しかし校舎の中はがらんとして人の気配はない。薫は一人でとぼとぼと第四校舎の屋上への階段を上がっていく。違う階段ではあるが、権蔵に言われて学校内の階段で全裸にさせられたのを思い出していた。
 (また脱がされるのだろうか・・・?)
 恥ずかしいことを迫られるのはこれまでの経緯から言って間違いないだろうと薫は考える。
 屋上の鍵は恭平が言っていた通りに開いていた。屋上に出てみるとそこには誰も居ない。しかしちょうど真ん中辺りにスポーツバッグが一つぽつんと置かれているのが見える。近寄ってみるとチャックが開かれていて、中に紙きれが入っているのが見える。
 (何かしら・・・。)
 嫌な予感にかられながらも手を伸ばしてその紙きれを取り出してみる。
 <スカートを脱いでこのバッグの中に入れて、中庭の方へ向けて落とすこと。その後西側の手摺に掛かっている手錠に片手を嵌めておくこと。>
 (やはり脱がされるのだわ。)
 覚悟はしていたことなので、バッグを持って西側の端の手摺のほうへ向かう。中庭は西側にあって、運動部が部活をしているグランドからは反対側になるので人に見られる可能性は少なそうだった。手摺に近づくと、確かに手錠が片側を手摺のパイプに嵌められてもう片側は開いたままでぶら下がっている。しかし手錠は二つぶら下がっていて1mほど離れている。
 (片手を嵌めておけと書いてあった筈・・・。)
 二つある手錠の片側に片手を繋げということらしい。薫は先にスカートのホックを外して脚から抜き取る。下着は何となく予感がして新しい物に替えてきていた。脱いだスカートをバッグに突っ込むとチャックを閉めてもう一度中庭に人が居ないのを確認してからバッグを放り投げる。ちょっと躊躇したが、もう命令に従う他はないのだと思い返し紙に書いてあった通りに片方の手首を開いている手錠の輪に通し輪を閉じる。ガチャリという音がして、もう自力では戻ることも逃げることも出来ないのだと改めて思い返す。
 「ちゃんと言い付けを守って待っててくれたようだね。」
 突然声がして何時の間にか恭平が近づいてきているのに気づく。
 「こんな時間に呼び出して、いったい何をさせようと言うの?」
 「今、分かるさ。さ、もう片方の手首にも手錠を掛けてあげようか。自分じゃ両方繋ぐことは出来ないだろうからね。」
 言われてみて初めて気づいたのだが、片方の手を手錠に繋いでしまうと反対側の手に手錠を自分で掛けることは出来ないのだった。

kaoru

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