被写体

妄想小説

美人アナ なな実が受ける罰


 三十六

 スタジオ内にはずらっとカメラと照明が並べられている。その中でなな実はきわどいポーズを取りながらエクササイズと称する振り付けを演じなければならないのだ。明らかにスカートの中を狙ったローアングルに設置されたカメラもあった。
 「いい表情だ、なな実。もっと恥ずかしそうにするんだ。生放送の時みたいに作り笑顔をする必要はないぜ。恥ずかしそうな、悔しそうな顔をするほどそそるってもんだ。カメラがスカートの中を覗き込んでいるのを忘れるんじゃないぞ。」
 言われなくても、なな実は自分の顔に笑顔を浮かべることが出来ない。言われるとおりに撮られるしかない自分の悔しさが顔に滲み出てしまうのだった。

 エクササイズのコーナーは基本的に生放送なのだったが、なな実が出演出来ないようなもしもの時の為に差し替え用にビデオを撮っておくのだと藤森は言っていた。しかし、なな実にもその撮影が他の用途にも使えるように撮られているのだとは薄々感づいていた。でなければ、あんなローアングルのカメラが必要な筈はなかったからだ。撮影も編集も藤森が誰の手も借りずに一人でやったらしかった。そして編集されたV(ビデオ)は一度も見せて貰えなかったのだ。

 その日、ディレクターの藤森は局長室に呼ばれていた。普通は一介のディレクターが局長室に呼ばれることなどはまずないのだが、藤森は局長の鈴木とは出身大学が同じで、局主催の同窓会の際に知り合いになり意気投合したのだった。以後、何かにつけて局長の鈴木は藤森Dを部屋に呼んでは近況などを聞いているのだった。
 「凄いね、ここんとこのニュース・ワイドの数字は。いつも見ているよ。あのエクササイズのコーナーの子がいいね。」
 「ああ、真中なな実ですね。なかなかセクシーでしょう。昼過ぎの硬い報道番組ですから、一風の清涼剤っていうか、斬新で注目を集めてます。」
 「ただのアナウンサーにしとくのは勿体ない人材だな。今度、紹介してくれよ。」
 「局長、ああいうのお好みですか。いいですよ。私がセッティングしましょう。ときに、あのエクササイズ、ご覧になっていてどうです?」
 「うーん、あとちょっとで見えそうってのがそそるんだが、フラストレーションも溜まるなあ。」
 「あの裏側、ちょっと見てみたい・・・とか?」
 「そりゃ、男だからね。俺も一応・・・。ひひひっ。」
 「ですよね。局長。実はいいV(ビデオ)があるんです。その、なな実のエクササイズ、ディレクターズカットみたいなやつ。」
 「裏版ってやつか?」
 「ええ、まあね。生では絶対、流せないやつですけど。ま、現場を取り仕切ってるんで、どんな映像も一度は私のところに入ってくるのでね。」
 「放送じゃ、一度もパンチラ晒してないって評判だけど。あるのかね。そんなやつ・・・。」
 「そりゃ、周り四方からカメラ廻してますし、編集では全部カットしてますけど。」
 「是非、見てみたいもんだね。そいつは。」
 「実は、局長。なな実はあの短いスカートのした、アンスコ、あ、ご存じないか、アンダースコートっていうんですが、いわゆる見せパンですね。あれ、穿いてないんですよ。いや、穿かせてないんです。アンスコだと、どうしても表情に緊張感が出ないんでね。」
 「おお、そうなのか。あの何とも言えない恥ずかし気な困ったような表情って、ただの演出じゃなかったのか。あの表情がまたそそるんだよなあ。」
 「局長も、やっぱり観るべきところは見てますなあ。あははは。マンスジもくっきりなんてのもありますぜ。」
 「マンスジ? 何だね、そりゃ。」
 「あれっ、知らないんすか。あそこの割れ目に食い込んだ下着がつくる筋のことですよ。」
 「え、そんなのがあるのか。是非、見せて欲しいもんだな。」
 「いいですよ。ただし、絶対内密にですけどね。」
 そうして藤森は言葉巧みに局長の気持ちを否が応でも煽り捲って、その気にさせたのだった。

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