妄想小説
美人アナ なな実が受ける罰
二十七
「藤森ディレクター、大変です。」
番組の本番が間近になってきて、スタイリストの安東マツがディレクター室に飛びこんできた。
「なな実ちゃんが、ミニスカでエクササイズをやるのはもう絶対嫌だって言って、アナウンサ控室に閉じこもっちゃってるんです。このままじゃ、番組に穴が開いちゃいます。」
「そうか・・・。判った。ここは俺に任せろ。」
そう言ってディレクター室の自分の席をすくっと立つと安東が案内するアナウンサ控室に藤森は急いだのだった。
「いいか。ここは俺が宥めて説得するから、お前たちは少し席を外していろ。俺を信用してちょっと待っててくれ。」
そう言うと、皆を下がらせてから一人アナウンサ控室のドアをノックした藤森だった。
「誰? あ、藤森ね。アンタがどう宥めすかしたって、私はもう金輪際、あんな番組には出ないわよ。」
「おい、なな実っ。お前、いつからそんなに偉くなったんだ。お前、自分の立場ってものが判ってないようだな。」
「え? 立場って、何よ?」
「おい、こいつを見てみろ。」
藤森が差し出したのは一枚の写真だった。それを見るなりなな実の顔が蒼白になる。
「その様子じゃ、満更覚えがないって訳でもなさそうだな。これ、お前だよな。どう見ても。」
「ど、どうしたの・・・。そんな写真。何処から・・・。」
「目を隠してはあるが、どう見たってこれはお前だ。こんな写真を撮られてたんだな。さ、白状しろよ。」
「・・・。」
「こいつは局に送りつけられたのを俺が皆が観る前に回収したんだ。そしたら変な電話が掛かってきてな。」
「変な電話って・・・?」
「真中なな実は、俺の言う事を聞くしかない立場なんだって言うんだ。それが証拠に、この間のワイド・ニュースの最後のシーンでなな実がパンチラを晒しただろ。あれは俺が指示、命令したからなんだって言うんだ。本当なのか、なな実?」
「そ、それは・・・。」
「やっぱり、そうなのか。実は今回のエクササイズの件も、その電話の主から指示されたんだ。なな実は言う事を聞くしかない筈だから、超ミニスカで演じるように命令しろっていうんだ。命令を聞かなかったら二度とテレビに出れないようにしてやるって脅してきたんだ。」
「じゃあ、あの新しいコーナーは、貴方や局長の意向って訳じゃないってこと?」
「ああ、正直言うとそうなんだ。ウチは今、なな実に降板されちゃうと実にマズイんだ。やっと数字も上がってきたところだし・・・。」
「私個人の事より、番組の数字が大事なのね。」
「まあ、落ち着けっ。なな実。お前を守ってやりたいんだけど、今は何とも手の打ちようがない。相手の正体が判らないだけにな。ここは言う事を聞く振りをして時間を稼ぐしかない。そのうち、何か手掛かりが掴める筈だから、それまでちょっとの間辛抱してくれっ。元はと言えば、お前がそんな写真、撮られたせいなんだからな。」
「そ、それは・・・。」
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