妄想小説
モデルになった美人ホステス
三十三
そのギャラリーの最終工事が終わったというので鮫津から観に行こうと誘いを受けた美沙子はギャラリーがある場所の近くで落ち合って出掛けてみたのだった。
「え、これ・・・なの? 何だか普通の家みたいで、お客は入りにくいのではなくて?」
「いや、僕が扱う客はぶらりと立ち寄るような客ではなくて、特定の顧客に限るつもりでいるからいいんだ。招待状を送って招かれた客のみを扱う予定だからね。何せ、高額な商品を取り扱う画商をやる訳だからね。」
「ふうむ。そういうものなの?」
鮫津が門の鍵を開け中に美沙子を招じ入れるので、中に入った美沙子は建物全体を初めてみる。
「あら、中は結構普通の美術館風の造りなのね。」
「そのまま真っ直ぐに行けばエントランスホールなんだ。」
美沙子は案内されるまま建物の入り口へのアプローチを歩いてゆく。
エントランスホールに入った美沙子の目にはまず自分自身の大きな肖像画が飾ってあるのを発見する。それは劉邦のモデルになって極初期に描かれたものに違いなかった。
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