薄紫着物

妄想小説


モデルになった美人ホステス



 十

 「美沙子クン、済まなかった。君に恥じを掻かせてしまったね。」
 「恥じだなんて・・・。恥を掻かせてしまったのは私のほうですわ。先生のご高齢を考えもせずに無理をおねだりしてしまうなんて。恥ずかしいです。」
 「今度、又にしよう。体調のいい時に。」
 「先生。決してご無理をなさらないようにしてください。私、何とか女としての妖艶さが表現出来るように修行して参ります。」
 「いや、君のほうこそ無理はいかん。そういうことは齢を経るに従って自然と身に付くものなのだ。焦って何かしようとしてはいけない。君のあるがままの自然な姿のほうが得難いものなのだよ。」
 接合する前に中折れしてしまった劉邦のことを何とか慰めようとする美沙子だったが、言えば却って男のプライドを傷つけてしまいそうでそれ以上言葉が出ない美沙子だった。

 美沙子はその後、まだ開店する前のカルネに朱美ママを訪ねたのだった。
 「どう、その後は? 順調に絵の方は進んでいる?」
 「え? ええ、まあ・・・。あの・・・。実は今日はちょっとママにお願いがあって来たのです。」
 「あら、お願いだなんて珍しいわね。なあに、純子ちゃん?」
 「あの・・・。実は私・・・。処女なんです。」
 「え、何? ぶっきらぼうに・・・。処女って、男を知らないって事?」
 「・・・。ええ、そうです。」
 「あーら、やだっ。でもそれって貴重な事よ、今時。」
 「そうでしょうか・・・。でも、その事で、劉邦先生が望んでおられるような表情が出せないようなんです。女の妖艶さ・・・っていうのか。性に疼いて我慢出来ないっていうような表情とか。」
 「ふうん? それでまさか私にお願いって、貴女の処女を奪う相手を捜して欲しいなんて言うんじゃないでしょうね。」
 「さすがに私も好きでもない人としたいとかは考えていません。あの、ママだったら色々知っているんではないかと。つまり・・・。女の人が自分を慰める為の道具とか・・・。」
 「え? それってバイブのこととか・・・? 勿論、知ってるわよ。こう見えても・・・。あ、どう見えているか分からないか。それこそ、私はこの道のプロだからよおく知ってるわよ。」
 「あの、私・・・。どうやって、その手のもの。手に入れたらいいのか分からなくて・・・。」
 「ははあ、そういう事ね。大丈夫よ。中古品でよければ一杯あるから。勿論、新品でなければっていうのなら、すぐにも手に入れてあげるわ。」

misako

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