妄想小説
モデルになった美人ホステス
十二
シュッ、シュッ、シュッ、シュッ。
小気味よいリズムで何処か遠くのほうから何かを擦るような音が聞こえていた。
(何の音だろう・・・。)
美沙子の頭の中で何かぼんやりしたものが徐々に像を結び始めていた。何かぼやけた姿が目の前に浮かんでくる。それが次第にはっきりとした輪郭を持って行く。それが男性の屹立したペニスであることに気づいて美沙子ははっとなる。
(え、駄目っ。駄目よっ・・・。ああ、そんなモノを欲しては・・・。)
その時、漸く美沙子は気絶状態から目覚めたのだった。
ゆっくりと目を開くと、すぐ傍で自分の方を時々見つめてはスケッチ用のコンテをスケッチブックの紙面に走らせている劉邦の姿が目に入る。シュッ、シュッというリズムで聞こえていたのは、劉邦が筆を走らせているコンテが紙面を滑る音だった。
「あっ・・・。わ、わたし・・・。」
気がつくと、美沙子は劉邦のアトリエの中にあるソファに身を横たえて眠っていたのだった。
「せ、先生。私・・。」
「ああ、気がついたようじゃな。ぐっすり寝入っているようだったので、態と起こさなかったのだよ。」
「私・・・。今までどうしていたのでしょうか。」
朦朧とする頭の中で、徐々に記憶が蘇ってくる。
(確か、私は劉邦先生のアトリエで縛られてその様子を絵に描かれていた筈・・・。そうだわ。あそこにバイブを当てられていて・・・。」
しかし気がつくと手首にも胸元にも縄は無く、股間に当てられていた筈のバイブも無かった。
「あの、私・・・。もしかしたら気絶していたのでしょうか?」
「ああ、そのようだね。気絶・・・というのか、古い言い方だが、気をやるってやつだな。つまり昇天してしまったということだ。」
「え、そんな・・・。恥ずかしいですわ。」
「いやいや。とてもいい表情を僕に見せてくれていたよ。おかげでとてもいいデッサンが沢山描けたんだ。それを元にいい作品が作れそうだ。」
「そ、そうなんですか・・・?」
劉邦は美沙子がバイブを股間に当てられて絶頂に至るまでをずっとデッサンしていたらしく、その後、昇天してしまった後も気絶している表情をずっと描き続けていたらしかった。
「疲れただろう。今日はもうこの辺にしておこうかね。」
劉邦は描いていたスケッチブックをバタンと閉じるとそう美沙子に問いかけるのだった。
「先生・・・。私の気絶する前の表情がそんなに良かったのでしたら、もう一度縛って頂けないでしょうか。その時の感触をしっかり頭に刻み込んでおきたいのです。」
「ふうむ。そうか。君が疲れきっていないのなら、私としては願ってもないことだが・・・。」
「先生。是非、お願いしますっ。」
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