妄想小説
モデルになった美人ホステス
十五
「劉邦先生、随分お久しぶりですわね。このカルネにいらっしゃって頂けるのは。どうです、ウチの純子は。ちゃんと絵のモデルとしてお務めは果たせていますかしら?」
「ああ、美沙・・・。ああ、純子ちゃんはモデルとしては最高だよ。もう何枚も完成品が出来上がっていて、もうすぐモデルも卒業でこの店に返すことが出来そうだよ。」
「あら、それは良かったわ。店に純ちゃんが居ないんで、淋しがってるご贔屓のお客さんも結構多いんですよ。あ、そうだわ。是非、この店にも飾っておける一枚、ご用意して下さらないかしら。店のいい宣伝になると思うんですよ。勿論、先生の絵の宣伝にもね。」
劉邦は既に出来上がっている絵の中からカルネに飾ってもいいものを思い浮かべていた。
「ああ、そうだな。選んでおくとしようか。ああ、それで本題に入るんだが電話で話しておいた例の薬、手に入りそうかね?」
劉邦の話し声が急に辺りを気にするかのようにひそひそ声になるので、朱美ママの返答も小声で囁くようになる。
「勿論ですとも。実はもう用意してあるのです。これですわ。」
「ほう? これなのか・・・。処方箋も無しで手に入れるのは随分苦労したんじゃないのか?」
「それは(じゃの道は蛇)って言いますでしょ。こういう店だからこその手に入るルートもございますのよ。」
「さすがはカルネのママだ。この事は純子には内密にしておいてくれよ。一応、サプライズとして使いたいのでな。」
「やはり純ちゃんに使うのですね。承知いたしました。私からは内緒にしておきますわ。」
そんな風にして菱山劉邦画伯はいきつけの店カルネのママを通じて、シナデルフィル、通称バイアグラを手に入れたのだった。
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