カルネの展示画

妄想小説


モデルになった美人ホステス



 三十二

 鮫津が劉邦の所蔵庫から持ち帰った絵がカルネに飾られたというので、美沙子も久々に店に出向いてみることにした。
 「ああ、純子ちゃん。素晴らしいわ、あの絵。お店のお客さんにもとても評判がいいの。皆さんすぐに純子ちゃんだって気づいていたわ。当分、お借りしてていいのよね。」
 「勿論です、朱美ママ。所蔵庫に眠っているより、多くの人に観て頂いたほうが劉邦先生の為にもなるし、勿論私も嬉しいです。」
 「ねえ、純子ちゃん。劉邦先生から物凄い財産を引き継いだんですってね。だとしたらもうカルネで働くなんて考えてないわよね。」
 「それなんですけど、私カルネではとてもお世話になったというのもあるし時々ならお店に出てみたいという気持ちはあるんです。実は鮫津さんから劉邦先生の遺品である作品を展示する画廊を開いてはどうかという提案があって、それが実現したらそちらのお店もみなくてはならないので毎日という訳にはゆかないんですけれど、週に何日かでしたら・・・。」
 「そう? そうなのね。助かるわ。あの飾ってある劉邦先生のモデルが時々はウチの店にも現れるってなったら店としても大評判になって凄い宣伝効果ですもの。是非、高額で雇わせて貰いますよ。」

 劉邦画伯の遺品を展示販売する画廊をやりたいという話は鮫津から突然もたらされたものだった。当初、自分は絵の価値や商売のことは全く疎いので無理だと断ったのだが、鮫津から共同経営者として時々画廊に顔を出すだけでいいと言われ、商売のことは全部引き受けるからと言われてその気になったのだった。絵の価格の交渉や契約などは全て鮫津が引き受ける代わりに売れた額の半分を美沙子が受取り、残りの半分を鮫津が受け取るという契約でどうかと言われ、それでいいと答えたのだった。
 また画廊の建物は既に手配してあるというのだった。都心の目抜き通りから二本ほど路地裏に入ったところにあったギャラリーを居抜きで購入する手筈になっていて改造が必要なので工事中というのだ。その購入と改造の為の費用は故人の為のギャラリーなので美沙子が受け継いだ相続から支払ってくれとのことで、美沙子には断る理由も無かった。

misako

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