妄想小説
走る女 第二部
八十一
「市長の秘密を買い取りたいだって? そんな金、君が出せるのかい?」
莉緒から聞きだした市長と莉緒の両方の秘密を握っているというのがグランド管理人の蛭田だということを知って、蛭田が一人でいる管理人室に単身乗り込んだ花音なのだった。
「わたしには出せないけれど、ある人に頼めば貸してくれると思うんです。」
「ある人か。君が頼めば何でもしてくれるって人が居るって訳だ。」
「ええ、多分・・・。」
花音から話を持ちかけられた蛭田は、市長から聞いたこの街の裏の有力者という男の話を頭に思い描いていた。金力も相当あるらしいと踏んだ。
「駄目だね。お金の問題じゃないんだ。」
「ではどうすれば・・・?」
「これはある種の懲らしめなんだ。あの市長が働いた狼藉に対するね。」
「狼藉・・・?」
「そうだ。これならどうだ。君が代りになって同じ狼藉を受けるんだ。それを承知するならあの秘密のビデオは渡してやってもいい。」
「秘密のビデオ? それを渡してくれるんですね。私に出来ることだったら何でもやります。」
「ほう? その言葉に間違いはないね。」
「はいっ。」
市長を救える希望が見えてきたことに花音は決意をあらたにする。
「何でもやります。」
その言葉を聴いて、蛭田はニヤリとほくそ笑む。計画通りに事が運んだからだ。
「それじゃ、このビデオを観て貰おうか。」
そう言うと、自分と花音の二人だけしか居ない部屋で自分のパソコンを立ち上げると花音に、莉緒が市長から受けた狼藉のシーンを見せるのだった。
「こ、これって・・・。」
動画を観た花音は言葉を喪う。
「本当に市長がこんな事をしたんですか。」
「市長に確認してみるかい? まあ、市長は知らんというだろうな。そうだ。莉緒に確認してみるがいい。あいつなら正直に白状するだろうからな。」
「そ、そんな・・・。」
「さっき、言ったよな。お前が代りに莉緒と同じ目に遭ってもいいっていうんなら、このビデオのデータは渡してやる。さ、どうだ?」
「えっ・・・。で、でも・・・。」
「やっぱりさっきのは口先だけなんだな。」
「い、いえっ。違います。本当にデータを呉れるんですね。だったら、やります。」
「ほう? じゃ、今すぐだぞ。それじゃ、トイレに行って貰おうか。男子トイレの方だぜ。」
花音は自分の膝ががくがく震えているのを感じる。しかし、市長の為ならと勇気を奮い立たせるのだった。蛭田は花音の気が変わらないうちに、やってしまうつもりだった。その現場のビデオさえ撮ってしまえば、今度は蛭田が花音を思うが儘に操れるのだ、そう思っていた。
蛭田は花音の背中を押して管理人事務所の中の男子トイレに連れ込む。
「さ、ここだ。この辺りにしゃがんで掃除をしてる真似事をしてみろ。」
そう言って花音を男性小便器の前にしゃがませると、そのすぐ隣の便器に向かって蛭田は市長と同じようにズボンから男性器を取り出して放尿を始める。
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