妄想小説
走る女 第二部
七十九
蛭田はその日、ターゲット・バードゴルフ仲間が遣り取りしていたラインの画像を改めてしげしげと眺めていた。前日、打合せに来ていた競技会の役員スタッフたちの一人から莉緒がライングループに入れて貰ったのを傍で立ち聞きしていたのだ。その時、このラインは使えると考えたのだ。それで莉緒が居ない隙に莉緒のスマホを操作して、自分のスマホにも友達紹介のメールを勝手にライングループに入れるようにしたのだ。莉緒のスマホは相変わらず蛭田だけがパスワードを持って自由自在にいじれるからだった。
既に手に入れてある花音のメールアドレスでその日の朝、ノーパンで競技に参加するように花音には脅して命令しておき、花音がノーパンで現れるという情報をゴルフ仲間の一人を装って流したのだった。
蛭田の作戦はまんまと功を奏し、花音がノーパンでプレイする際に老人たちに写メを撮らせ、その画像を回覧するように仕組んだのだった。その後、誰かがあれはババシャツ色にガードルだったと情報を送ったものが居るのにも気づいていた。そんな事をするのは莉緒しか居ない筈だとも気づいたのだった。
(あいつにはちょっと仕置きをしておかなくちゃな。)
莉緒が二度と自分の邪魔をしないように、自分の立場を思い知る策略を練るのだった。
「で、最近はどうなんだい。お前の新しい勤め先は?」
「どうって言われても、まあ普通よ。そんなに難しい仕事はないし・・・。」
「そうかあ。いいなあ、女のアルバイトは気楽で。」
「気楽っていうけど、結構気は使うのよ。グランド施設を使うのは結構老人が多くて、訳の分からないこと言う人も多いし。あ、でもこの間、グランドを使っているターゲット・バードゴルフとか言う人達の仲間のラインっていうのに入れて貰ったんだ。」
「ああ、ラインは気をつけたほうがいいよ。情報流出とかあるっていうから。」
「ああ、大丈夫よ。わたしは見るだけで、こっちから送ったりはしないから。」
「そう言えば、また会社に変なビデオ投稿があったんだ。パソコンとかに詳しい石田っていうのが居るって言ってたろ。」
「貴方の後輩なんでしょ。そっちのほうが詳しいの?」
「最近の若い奴の方がそういう機械に慣れてるってだけだよ。」
莉緒は夫の話から暫く考え込んでいる。その後やおら夫に切り出したのだった。
「ねえ。その石田さんて人、わたしの職場でもちょっと困っていることがあって、手助けしてくれって頼んだらやってくれないかしら。」
「へえ、何を頼みたいんだい?」
「パソコンとか通信とかそういうの・・・。わたしには手に負えそうもない仕事があるの。パソコンの得意な人が居ないかなってずっと考えてたんだけど。」
「ふうん。まあ、そんなに時間の掛かる話じゃなけりゃ、手伝ってくれるかもな。まあ、内容にも依るからメールで訊いてみなよ。ほら、これ。彼の名刺。アドレスがここに書いてあるから。」
「助かるわ。あなた。」
「で、話を元に戻すと今度の投稿ビデオは所謂SMってやつらしい。」
「SM・・・? あの変態みたいなやつ?」
「ああ、まあそういう類さ。あの世界じゃ聖水ってのがあるそうだよ。」
「セイスイ? 何それ?」
莉緒は聞き返しながら嫌な予感にかられる。その言葉は自分自身がつい最近使ったものだからだった。
「M男がSの女王様にオシッコを呑まされるってやつ。本当にあるんだな、そういう世界って。」
「嫌だわ、そういうの。」
「いや、それがさ。石田が言うには、そのM男が今のうちの市長に似てるんじゃないかって言うんだよ。」
「し、市長ですって・・・。」
「何をそんなに驚いているのさ。似てるだけだよ。だってそのM男の顔はモザイクが掛かっていて本当は誰だか分からないんだよ。」
「そ、それで・・・、女の・・・、女のS役の女王ってのもモザイクが掛かってるの?」
「ああ、そうらしい。俺は実物は見てなくて話を聞いただけだけど。今度見せて貰おうかな。」
「だ、駄目よ。そんなの・・・。そんなのに感化されて、ウチでもやってみたいなんて言い出したらもう離婚よ。」
「そんなあ、大丈夫だよ。家ではそんなプレイはしないよ。ちょっと縛ったり、フェラチオぐらいだったら変態プレイって言わないよな。オシッコ呑ませるとか、そういうのは俺も駄目だな。」
そんな話が出たせいで、その夜は久々に莉緒は夫のトオルに縛られることになるのだった。
「貴方でしょ、ウチの亭主の会社に変なビデオを送ったのは?」
「早速そんな話題が出たようだな。お前こそ、この間の市長秘書のはノーパンじゃなかったなんてババシャツ色のガードルの写真をラインに載せただろ。」
「あ、あれは・・・。あんまりにあの娘が可哀想だったからよ。どうせあの子にパンツ穿かないようにさせたのも貴方なんでしょ。」
「いいか。お前は俺の性奴隷なんだ。それをもう一度よく分からせる為に市長のビデオを送ったんだ。なんならモザイク無のを送ったっていいんだぜ。」
「そ、それは困ります。そんな事されたら、あの人ももう会社には居られなくなるし、わたしだって・・・。」
「だったらよく心の中に刻んでおくんだな。俺に黙って勝手な真似はしないってな。」
「わ、わかりました。お赦しください。」
「そういうのは、ご主人様の前で土下座で頼むんだ。それも服を全部脱いで素っ裸になってな。」
莉緒はそれ以上反論することも出来ず、言う通りに服を脱ぎ始めるのだった。
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