妄想小説
走る女 第二部
四十八
「ここか、管理人室のトイレは。」
何も知らない権田市長が管理棟のトイレに入っていく。男性用便器に向かって将に放尿を始めた時だった。すぐ後ろの個室がガタンと開いて掃除婦姿の莉緒が出てきたのだった。
物音に思わず振り返った市長と莉緒の目が一瞬合う。
「あ、掃除中だったのかね。済まん。いや、今すぐ済むからそのまま掃除を続けてくれ。」
莉緒は目を伏せるようにしてずらっと並ぶ一番奥の男性小用便器の前で腰を屈める。そのまま掃除をと言った市長だったが、気になってつい横の莉緒の方を見てしまう。再び二人の目が合ってしまい、莉緒は慌てて目を逸らす。
「君、随分若そうだね。そんな齢で掃除のオバサンか。他にもっと仕事はなかったのかね。」
「あ、あの・・・。なかなか勤め先が見つからなくて・・・。」
「そうかい。君ぐらいの齢だったらもっといい仕事はいろいろあるよ。私は市長だから市役所の仕事もいろいろ知ってるからね。どうだい、紹介してあげようか。」
「本当ですか?」
市長の放尿は止まっていたが、まだ陰茎は便器に向けて出したままだった。
「男子トイレなんかを掃除してると、男のあそこを見てしまうこともあるんだろ?」
「え、それは・・・。」
「やっぱりあるんだね。どんな気持ちだね、そんな時。」
そう言いながら、市長はわざと便器から一歩下がる。ペニスは以前ズボンから出したままだ。
「あ、あの・・・。」
ゆっくり市長はペニスをズボンから出したまま、莉緒の方へ身体を向ける。
「君。もっといい仕事を見つけたいだろ。私が手を貸してやるよ。」
そう言うと、一歩莉緒のほうへ近づく。
「あ、あの・・・。わ、わたし・・・。」
どうしていいかわからないように、莉緒は腰を屈めたまま後ろへ下がる。しかしすぐに壁にぶち当たってそれ以上は後ろに下がれない。
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