トイレ個室監禁

妄想小説


走る女 第二部


 六十九

 (昼間、すでに一度裸にされて剃毛までされてしまった以上は、今更ひるんでも仕方ないのだわ。)
 そう考えて花音は覚悟を決めたのだった。個室の扉は後ろ手で閉めておくことにしたが、ロックは掛けないでおく。
 花音が自分から裸になって手錠を掛けてじっと待っていると、5分もしないと思われる頃、男子トイレの入り口の扉が開かれた音を耳にした。足音がゆっくりと自分が居る個室の方に向かってきているのが分かる。微かな軋み音とすうっと流れ込んでくる冷たい空気を感じて誰かが個室の扉を開いたのが判った。
 「誰なんですか。わたしにこんな事をさせてどうしようと言うのですか?」
 大声にならないようにそっと囁くような声で訊ねる。しかし返事はかえって来なかった。代わりに首に何かが巻かれるのが判った。
 (首輪?)
 ロープを輪にしたようなものらしかった。それが軽く上の方に引かれるので、どこか上の方に縄を繋いでいるらしいと花音は推測する。目隠しのアイマスクにも手が触れられて、何かをしている様子だったが、視界を奪われている花音には何をされているのか判らない。
 準備が整ったとばかりに、一旦男の手が止まる。何も身に着けていない全裸の格好と茂みを喪ったつるつるの股間が見られているのだと視線を肌で感じる。
 突然、剥き出しの乳房が男の手で鷲掴みにされたらしかった。
 「あっ・・・。」
 思わず声を挙げてしまう。その反応に男は満足したようで、ぐりぐりとのの字を書くように乳首を指で挟んで捏ね廻す。
 男に乳房を蹂躙されて何も出来ないことに、妖しい感触を憶え始める。
 (いけない。感じてはいけないわ。)
 そう思うのだが、どこまで我慢出来るか自信がなかった。
 突然、男の片方の手が乳房から外された。花音が予感したとおり、その手は乳房を滑りおちて臍の辺りから更に下の方へ伸びてくる。
 「ああっ・・・。」
 男の指が守るものが何もないすべすべの陰唇に触れた瞬間に花音は自分の身体の中心に電気のようなものが走るのを感じた。やがて男の指が割れ目の中へ侵入してくる。
 ぴちゃっ。
 花音は自分の陰唇が自分のものでないかのような音を立てるのを聞いて、耳をふさぎたくなるが、自分で掛けた後ろ手錠がそれを許してはくれない。
 ぴちゃっ、びちゃっ。
 男は卑猥な音を愉しむかのように無毛の陰唇をまさぐり続けるのだった。
 「もう赦してっ。それ以上されたら、おかしくなってしまう・・・。」
 花音の悲痛な叫びが通じたかのように、男の指がすっと花音の陰唇と乳房から離された。しかし、いざ手を離されてみると、切ない思いがじわじわっと花音の中に湧き上がってくるのだった。そんな花音の思いを見透かしたかのように男が手を顎の下にあてて、花音を上向かせる。
 (そんなによかったのかい。)
 男の手はそう自分を嘲っているかのように感じられた花音だった。
 その直後、ふたたびすうっと冷たい空気が流れるのが感じられる。男が個室の扉を開けたらしかった。花音も身体を動かしてみようとするが、首に巻かれた縄がぴんと張って一歩も前に踏み出せないことが判る。そのすぐ後にバタンという音がして個室の扉が閉められたのが分かる。花音が耳を澄ましていると、隣の個室が開けられた気配がする。それから自分が目を蔽っているアイマスクが何かで引っ張られるような違和感を感じる。ぴくっ、ぴくっと、まるで魚を釣り上げる時のような動きが感じられたかと思うと、急に目の前がぱっと明るくなる。眩しさに暫く瞼をしばたいていて、目が慣れてくると隣の個室との間の壁を紐を着けられたアイマスクが隣の個室に向かって引き上げられていくのが見えた。首に巻かれた縄はやはり天井近くの給水タンクからL字型にでている水道管に巻かれた上で、隣の個室のほうへ伸びているのが判った。隣の個室内でどこかに結び付けられている様子なのだった。
 (こんな格好で放置しようというのかしら・・・。)
 そんな予感は、隣の個室に居た男が出て行く気配がして、その後男子トイレの扉が一旦開いて再び閉じたことから現実のものとなった。男子トイレの明りは点けられたままだったので、暗闇の中に独り放置されることにはならなかったが、グランドの外からは男子トイレの中に明りが灯っているのがはっきり見て取れる筈で、それは花音にとっていい事なのかどうかは何とも言えない事なのだった。

花音

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