妄想小説
走る女 第二部
五十四
「これっ。結構短いんですね、丈が。あ、そうか。水を使う仕事だから裾が濡れないようにって事なんですね。」
「悪いね。トイレ掃除から始めて貰うなんて。」
「いや、大丈夫ですよ。任せてください。掃除用具はあそこですね。早速、取りかかります。」
仕組まれたとは思いもしないでうまく女秘書をグランドのスタンド下にある男子トイレに連れ込んだ蛭田は、ここまでの首尾に満足してほくそ笑むのだった。
同じ頃、市役所の市長室には蛭田に命じられた莉緒が乗り込んでいた。市長の権田には早乙女の留守中の秘書としてと言ってあるが、勿論秘書の仕事をさせる為ではなかった。
「き、君・・・。ほんとにあの時の掃除婦やってた人・・・なのか?」
シックな超ミニのツーピーススーツを着こなして現れた莉緒は掃除婦とは別人にしかみえなかった。
「蛭田から言われて早乙女さんの代りを勤めるよう言われたの。よろしくね。」
挑戦的な笑みを浮かべる莉緒の様子に、権田は狼狽える。
「あ、あの時のことは・・・。ほんとに済まなかったと思ってるんだ。どうかしてたんだ、俺は。だから・・・。」
「蛭田さんは、貴方が私の言う事は何でも聞くって言ってたけど、本当かしら?」
「も、も、も、もちろんだとも。何でも仰ってください。だけど、この部屋の中だけにしてくれるかな。なにせ、ここでは私は市長なのだから。私の立場、わかってくれるよね。」
「ふん。調子いいわね。ま、いいわ。じゃ、市長室の入り口、鍵掛けてくるわね。そのほうがいいんでしょ?」
「あ? ああ・・・。」
既に権田は莉緒を前にしてたじたじになっている。
面会中の札を出し、市長室入り口の扉を内側からロックして戻ってきた莉緒は市長に土下座の格好で床に這いつくばるように命じる。しかし、すべては事前の蛭田の筋書きどおりにしているに過ぎない。
「貴方が私にグランドの管理人室のトイレで何をしたかは覚えているわよね、」
「は、はいっ。申し訳ありません。あの時はほんとにどうかしてたんです。」
「その償いをして貰うわよ。いいわね。」
「あの・・・、な、何をすればよろしいでしょうか?」
「まず、ズボンを脱ぐのよ。パンツ一枚になりなさい。」
「え、そんな・・・。」
「大丈夫よ。鍵は掛けてあるから、今ここには誰も来ないわ。」
権田は観念したらしく、首を項垂れて言われたとおりズボンのベルトを緩め、ズボンを下ろして足から抜き取る。それを観て莉緒は蛭田から預かってきた手錠を市長の目の前に放り投げる。
「それを自分の両手に後ろ手に掛けるのよ。」
「わ、わかった・・・。こ、これで、いいか?」
「ブリーフなの。あら、もうここ硬くしてるみたいね。そんな資格あると思ってるの。」
莉緒は市長に近づくと、いきなりブリーフの股間を思いっ切り抓り上げる。
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