妄想小説
ワンピースの女
三
翌日、貴子は時間が来て国技館への車に乗せられる前に源蔵の部屋へ呼ばれた。
「お呼びになったそうですが。これから国技館へ参ります。」
「ふむ。キヨに支度はして貰ったのか?」
「・・・。は、はい。」
貴子はその内容を源蔵が知りながら言ってることがわかっていて直ぐに素直には答えられなかった。
「ならば近くに来てみせなさい。」
貴子はベッドに横たわる源蔵に近づく。
「捲るのだ。」
源蔵にそう言われなくても、そうしなければならないことは分っていた。屈辱的な気持を抑えて貴子はワンピースの前裾部分を太腿付け根の際まで捲り上げる。横たわる源蔵からも貴子の太腿の一部が覗いて見えているに違いなかった。その部分へ源蔵は遠慮会釈もなく手を伸ばす。
「あ、うっ・・・。」
源蔵の冷たい手の先が貴子の腿に触れ、やがてその更に奥にあるものを探り当てる。
「ふうむ。よく締まっているようだ。これなら緩むこともあるまいて。」
老人はようやく貴子が持ち上げたワンピースの裾から手を引いた。
「今日は、存分に立ちあいに立つ力士の気持ちを分かち合ってくるがよい。」
「・・・。では行って参ります。」
老人の最後の言葉には直接答えないまま、貴子はその場を辞して国技館へと向かう車へ急いだ。
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