妄想小説
ワンピースの女
十四
「帰ってきたか。どうだ、辛かったか?」
(辛くない筈がないではありませぬか。) そう言いたくても口に出来ない自分が惨めだった。
「自分で外してはならないぞ。マスクだけ自分で取りなさい。」
貴子は源蔵の前でマウスピースを咥えたままの顔を晒す。
「顔をこっちへ近づけなさい。」
貴子は無言で源蔵の手の届く範囲まで顔を近づける。源蔵の手が伸びてきて口の中に指を突っ込まれる。下を向いたせいで、貴子の口からつうーっと唾が一滴流れ落ちる。それが情けなくて、ついに我慢していた涙が眼尻に堪り頬を伝っていく。源蔵が指で摘んで取り出したペニスの形をしたマウスピースも貴子の唾液でじっぽりと濡れていた。
「あふっ。く、くっ・・・。」
やっと閉じることが出来た口は、まだ痺れているかのようにまともな声も出せなかった。
「明日はもう少し咥えやすいものに変えてやろう。」
そう言った源蔵の言葉は、貴子には少しもいたわりがあるものには聞こえないのだった。
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