痴漢餌食

妄想小説

ワンピースの女



 二十

 忌まわしい記憶から、はっと我に返った貴子は事態は貴子には致命的とも言える状況にあることに気付く。マスクの下には源蔵に嵌めさせられた口枷のせいで、言葉を発することが出来ないばかりか、悲鳴さえ上げられないのだ。しかも薄手の捲り上げやすいワンピースの下には帯がT字型に巻かれているだけなのだ。悪い事にその日に限って結び目は簡単に解けないきつい縛り方ではなく、帯の端を引っ張れば解けてしまいかねない結び方なのだった。
 男の指が、嘗ての忌まわしい女学生の時の記憶のように貴子の太腿の内側をなぞり始めていた。貴子は身を凍り付かせる。下手に動けば周りに気づかれるかもしれなかった。そしてその事は貴子を助けてくれるどころか、貴子を更なる窮地に陥れるかもしれないのだった。マスクの下にペニスの形をしたマウスピースを咥えさせられていること、そしてワンピースの下には下着ではなく赤い帯をまわしのように褌として着けさせられていることは何としても見つかってはならないのだ。もし見つかれば痴漢を捕まえてくれるどころか、貴子自身が変質者として突き出されかねないのだ。

貴子

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