年増修道女

妄想小説

尼僧院物語



 九

 (誰にもみられなくてよかったわ。)
 ほっと胸を撫で下ろすマリアだったが、二人の様子をじっと眺めているものがあったのに気づいていなかったのだ。修道院の屋上の鐘楼の影から二人をずっと見張っていたものが居たのだ。僧院長を含めた数人の古参の修道女を覗くと、マリアよりはずっと年増の修道女ばかりだが、その中でも皆の規律に最も厳しいまとめ役のナタリー修道長だった。

 涼馬の行動は衝動的なものでは決してなく、ずっと練ってきた作戦だった。油断しているマリアの隙を突いて唇を奪ってしまおうと計画していたのだ。それが車椅子で外に連れ出され木立の陰に入ったことで絶好のチャンスが訪れたのだった。唇を奪うだけではなく、マリアの僧衣の下に隠されたものを確認するのも目的の一つだった。そしてマリアを押し倒した際にしっかりとそれを確かめたのだった。マリアは僧衣のしたに太い荒縄を巻かれていた。僧衣に隠された中に縄の戒めを常に嵌められているらしいのだ。マリアに肩を貸して貰った時に何度か感じた違和感はそのせいだったのだと涼馬は突き止めたのだった。何の為にそんな戒めを受けているのか、縄はどんな風にマリアの身体に巻かれているのかは判らなかったが、僧衣の下のマリアの姿を想像して涼馬は激しい勃起をしてしまうのだった。

 一方のマリアだったが、生まれて初めての接吻の経験に動揺していた。修道女としてあるまじき行為をしてしまったとの後悔の念とは別に、男性との禁断の行為のあまりにも甘く切ない感情に揺れ動いていた。その時の事を自分の記憶から振り払おうとすればするほど、あの時の気持ちが舞い戻ってきて、身体の中心に自分では止められない疼きを感じてしまうのだった。自分の中に生じた抑えきれない気持ちを何とかして貰おうと僧院長の部屋を訪れたマリアだった。
 「オリガ僧院長様。私はもしかしたらとんでもない過ちを犯してしまったかもしれません。どうしたらいいのか思い悩んでいて、僧院長様にご相談させて頂きに参りました。」
 「マリアよ。もしかしたら貴方に世話をして貰っているあの若者に関することなのではないかな?」
 「は? どうしてそれを・・・。」
 「そうなのですね。」
 「はい、僧院長様。」
 「明日、ちょうど巡回のアレクセイ神父が来られます。神父に懺悔なさい。正直に、遭ったことを全て打ち明けるのですよ。」
 「わ、わかりました。僧院長様。」

tbc
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