妄想小説
尼僧院物語
十四
その頃、マリアは何時の間にか集まってきたやぶ蚊たちに苦しめられていた。最初は股間に痒みを感じて自分の股間を見降ろしてみて、黒いやぶ蚊が恥丘の陰唇の脇に留まっているのを発見したのだ。追い払おうとするが両手は背中できつく戒められており、どうすることも出来ない。足を擦り合わせてみても股間は無防備のままだ。腰を振ってみても蚊は離れてくれなかった。やがて充分に血を吸った蚊が飛び立っていくのだが、また別の蚊がマリアの股間を狙って飛びまわってくるのだった。
(い、いやっ・・・。ああ、痒いっ。)
マリアの腰の周りを飛び交うやぶ蚊たちはどんどん増えているようだった。
(どうして、こんなところばかりに蚊が集まってくるの。)
マリアは剃毛された後に、密かにやぶ蚊を誘うほうずきのエキスが塗り込められたことを知らなかった。
「おや、マリア。そんなに腰を振ってどうしたの?」
突然の声にマリアが顔を上げると年増修道僧が二人立っているのだった。手には何故かバケツと便器用のブラシを手にしている。ナタリーに言われて物置に便所掃除の道具を取りに行ってきたところなのだった。
「ああ、ヘレナ様、ルチア様。助けてください。やぶ蚊が私の血を吸おうと飛びまわっているのです。」
「まあ、蚊に刺されているのね。どれ、どこを刺されたの? あら、いやだ。あんなところばっかり刺されてる。何か変な匂いでもするのかしらね。」
マリアの蚊に刺されている無毛の股間を珍しいものでもみるみたいに腰を屈めて覗きこんでいる。
「あ、また来た。あ、留まったわ。どうしましょう。」
「ああ、ヘレナ様。どうか蚊を追い払ってくださいませ。」
「マリア。回心中の者には触れてはならない決まりになっているのよ。私達にはどうも出来ないわ。でも痒そうね。そんなに刺されちゃって。痒いんでしょ?」
「ああ、痒いのです。とても痒くて・・・、堪らないのです。何とか助けてくださいませ。」
「マリアに触れてはならない決まりだし。困ったわね。掻いてあげたいけど・・・ね。あ、そうだ。このブラシの先だったら掻いてもマリアに触れたことにならないかもね。」
「え、そ、それは・・・。便器に使うブラシですよね。そんなもの・・・。」
「そうよね。幾らなんでもこんなもので擦られるなんていやよね。」
「じゃあ、ナタリー様がお待ちだから私達行くわね。」
「ま、待って。待ってください。そのブラシで構いませんから、私のここを擦って掻いてくださいませ。」
「え、そんなところ。便器のブラシで擦られたいの?」
「え、ええ・・・。構いませんわ。痒くてたまらないのです。お願いです。」
「あら、そう? どうしてもっていうのならね、ふふふ。」
マリアが繋がれた場所の先にある物置小屋からナタリー様がトイレのブラシを取ってくるように命じた訳がブラシを持ったヘレナには納得がいったのだった。
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