懺悔室告白

妄想小説

尼僧院物語



 十

 翌日、僧院長に言われた通りにマリアは修道長のナタリーを通じてアレクセイ神父に懺悔をしたい旨を伝え、指定された時刻に礼拝堂奥の懺悔室に向かったのだった。
 「懺悔したい事があるとの事だが、どういった事かな?」
 告解場の格子の向こうでアレクセイ神父がマリアに訊ねる。マリアには暗がりに居る神父の表情は見てとれない。
 「わ、私、マリアは・・・、修道女見習いとして・・・、とても罪深いことをしてしまいました。」
 「ほう? 罪深い事とは、どんな事かな?」
 「若い・・・、若い男性に私の唇を・・・、唇に口づけされてしまったのです。」
 「ふうむ。口づけとな。」
 格子の向こう側で神父の右手が祭服の奥に差しこまれたのはマリアには見る事も出来ない。
 「どのようにして、その口づけとやらはされたのかな?」
 「私の腰を突然掴まれ、押し倒されて、そのまま顔を私の顔に押し当てられたのです。」
 「男の唇をそなたの唇に押し当てられたというのだな。」
 「左様でございます。」
 「その時、そなたはどう感じたのじゃ?」
 「わ、わかりません。突然、動けなくなりました。」
 「動けなくなったとな。」
 「ええ、そうです・・・。」
 「気持ちが良かったというのか?」
 「え? わ、わかりません。」
 「それで、どうしたのじゃ。その後・・・?」
 「その男の方は、私の尼僧服の中に手を伸ばして来られて、太腿を触られました。」
 「太腿とな。それはどんな気持ちじゃったのじゃ?」
 「わかりません。咄嗟の事で。でも、とてもいけない事をしているのだと気付き、男の方を突き飛ばしました。」
 「それ以上はその殿方と接しなかったというのかな。」
 「はい。その通りでございます。」
 「ふうむ。それは困った事じゃ。」
 「私はどうしたらよいのでございましょうか?」
 神父は祭服の奥に差しこんだ手で股間をまさぐっていた。
 「お前の口は穢れてしまっている。それは神の御力によって浄めねばならない。」
 「どうすればよいのでしょうか?」
 「今からお前に神の奥義を授けることによって、お前の穢れた部分を清めてしんぜよう。さあ、懺悔室の外に出て私の居る部屋へ入るのだ。」
 「懺悔室の中の神父様のお部屋へですか?」
 「そうだ。すぐ来なさい。」
 マリアは一旦、礼拝堂の懺悔室を出ると、神父がいる隣の部屋へ入る。そちらはマリアが今までいた懺悔室と比べてとても薄暗い。

tbc
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