妄想小説
尼僧院物語
十九
異変はすぐにやってきた。身体の中心が妙に熱いと思っていたら、それがどんどん掻痒感に変ってゆくのだった。それは昼間森の端で股間を蚊に刺された時の比ではなかった。マリアは僧服を着せられる際に股間に何か塗り込められたような気がしただけだったが、まさかそれが強力な催淫効果と掻痒感を募らせる媚薬であるとは思いもしない。
(こ、この痒みはどうしたというの・・・。)
片手は背中できっちり縛り上げられていて、自由なほうの手には十字架を握らされている。
(ああ、痒いわ。たまらない。誰か助けて・・・。)
あまりの痒みにマリアは膝を立てて脚を交互に擦り合わせる。しかし肝心の股間の中心にはどうやっても届かない。
マリアはつい手にした十字架を股間に向けて下げて行く。
(ああ、いけないわ。でもこうするしか痒みから逃れることは出来ない。ああ、お赦しください。)
マリアは僧服から裸の脚を大きく露わに広げると痒みの中心に手にした十字架の端を押し当てる。
(ああ、ここが・・・。ここが痒くて堪らないの。)
最初は痒みの中心である陰唇部分に彫刻された十字架の柄のような部分を擦りつけていたのだが、その後十字架の柄の先端を陰唇の上辺りに当ててぐりぐりと擦りつけると痒みが次第に気持ちよさに変ってゆくことが判った。マリア自身は自分がクリトリスを勃起させていて、その廻りを柄の先で慰めていることに気づいていなかった。ただ、自然の摂理に身を任すように生理的な衝動で股間を癒していたのだった。
涼馬が目を覚ました時に、やはり身体の自由が利かないことにすぐに気付いた。今度はこれまでと違って暗い部屋に椅子に縛り付けられている。それだけではなく、声も上げられないように口に何か詰め込まれてその上から細い布のようなもので口を割るように猿轡まで咬まされていたのだった。
(ここは、何処だろう。)
暗闇に次第に目が慣れてくると、どうやら狭い部屋の中であることが判る。自分が縛り付けられている椅子は頑丈な木製の大きなもので、少しぐらい身を揺らしてもびくともしない。そのうちに目の前に格子のようなものが嵌められていることに気づく。格子の手前は真っ暗なのだが、その向こう側にはぼんやりと光が洩れている。
更に目を凝らして格子の向こう側を見やると床の上に誰かが蹲っていることに気づいた。
(あれは・・・、マリアじゃないか。あんなところで何をしているんだ?)
次へ 先頭へ