妄想小説
尼僧院物語
二十二
翌朝、目が覚めていつものベッドに居る自分に気づいた涼馬は身体がそうとう憔悴しているのを感じていた。朝立ちすることもなく、すっかり萎えきった自分のペニスが芯の中でじんじん痺れているように感じられる。
(ゆうべ、何度射精したのだろう・・・。)
憶えているだけで四度は果てた筈だった。最後はイッてしまった瞬間に後ろからハンカチのようなものを口と鼻に当てられて刺激臭を感じたと思ったら意識がなくなっていた。頭が朦朧として昨夜あった出来事を逐一は思い出せない。しかし、両手、両足を広げて鞭打たれるマリアの姿だけは脳裏に焼き付いていた。
いつも通りにいつもの時間にマリアはやってきた。その朝も何事もなかったかのようにすましているが、心持ち疲れ切っているようにも見える。
「お食事をお持ちしました、涼馬さま。」
「ああ、マリアさん。ありがとう。」
いつも通り食事の盆をベッド脇に置いて、立ち去ろうとする時にめまいがしたのか身体がふらっとする。咄嗟に手を伸ばした涼馬に二の腕を支えられたのだが、その腕に激痛が走ったようで、マリアの顔が苦痛に歪んだのが涼馬にも判る。
「大丈夫かい?」
「すみません。何でもありません。もう放してください。」
前の日には涼馬に触れられて物凄い勢いでその手を跳ね除けたマリアだったが、この日はそんな元気も出せない様子だった。
「痛いのかい?」
「いえ、そんな事はありません。」
苦痛を堪えて顔を顰めながら涼馬が支える手を振りのけて急ぎ足で去って行くマリアだった。
その日、一日中涼馬はこの修道院に来てからのことを思い返していた。毎晩、マリアが給仕してくれる夕食を口にすると直ぐに睡魔がやってくるのを不審に思い始めていた。
(あれは、きっと睡眠薬のようなものを呑まされているに違いない。そうだ。夕食の度に呑まされる僧院長が薦めているという葡萄酒に違いない。あれに何か含ませてあって、そのせいで意識を喪ってしまうのだろう。もし、あの葡萄酒を呑まないでいたら・・・)
涼馬は作戦を考えることにした。
その日の夕刻、マリアがいつものように夕食を給仕してくれる。最後に出された葡萄酒の盃をマリアが背を向けた一瞬、ベッドの脇に隠しておいた洗面器にこっそり空ける。
「ああ、何だか急に眠気が襲ってきたぞ・・・。おや、どうした・・・のだ・・・ろう。」
深い眠りについたことを確認したマリアがそっと部屋を出て行く。涼馬は万が一にも眠ってしまわないように、時々自分で自分の腕をつねったりして目を覚ましておくことにした。
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